セラピスト・治療家におすすめ「解剖学教材」まとめ10選

おすすめの書籍・教材

セラピストや治療家にとって「解剖学」はまず最初に学ぶものです。養成校でも教材として購入したと思いますが、より深く勉強したいと思うと、それだけでは不十分だと思います。ここでは、実際に自分で使用しての実感をもとに、おすすめの解剖学教材を紹介したいと思います。

その人の職域や専門分野によっては、より局所的で専門的な教材も必要かもしれませんが、これから紹介するものでも相当なレベルまでフォローできると思います。このようなベースの教材を揃えておいて、その先は状況に応じて買い揃えるか、大学図書館などに調べに行くと良いと思います。

ここで紹介する教材はどれも質的に高いもので、どれを選ぶかという基準に関しては最終的には好みと経済的条件次第だと思います。どれも決して安価ではないので、可能であれば大学図書館や書店で一度、手に取ってみることが一番良い方法だと思います。また、各教材について詳細を書いた記事も最後にリンクを貼っておきましたので、よろしければ参考にしてください。

解剖学書

図面と文章により解剖学を解説した書籍です。文章の解説は日本でも良いものがあります(文章については本当は母国語の方が良いのかもしれません)が、図面に関しては外国の書籍の方が工夫がされているように思います。世界的に広く普及している2冊を紹介したいと思います。

グレイ解剖学

おすすめ度 

グレイ解剖学の初版は、1858年に医学生向けの教科書としてロンドンで出版されました。イギリスの外科医であり解剖学者のHenry Grayの著述と、Henry V. Carterの精密な図面によりベストセラーになりました。以後、現在に至るまで40回を超える版を重ねています。2004年に学生向けに「Gray’s Anatomy for Students」が派生して、現在、エルゼビア・ジャパンから出版されている「グレイ解剖学」のシリーズはこれを訳したものです。2019年1月時点で、第3版まで刊行されています。
この第3版では電子書籍用のシリアルコードも付属されていて、大きなメリットとなっています。価格も電子書籍が付属していなかった第2版に比べて2000円の値上げにとどまっており、かなりお得なように思います。

図面はカラフルでやや模式的なように思います。理解しやすいように角度も色々と工夫した跡が見られます。もともとが学生用として派生したものなので、スッキリ必要な情報をまとめた感があります。第3版の表紙の上の部分に「Study smart with Student Consult」と書かれているのですが、その「smart」というのがピッタリだという印象です。

あらゆる解剖学書の基準と言いますか、スタンダード的な立ち位置の書籍だと思います。
1冊解剖学書が欲しいとけど、内容にこだわりがなく判断基準がない時に、無難にお勧めできると思います。

臨床のための解剖学

おすすめ度 

原著は1980年にK.L.Mooreが単独の著書として出版した「Clinically Oriented Anatomy」が始まりです(現在はA.F.Dalley 、A.M.R.Agurとの共著)。2010年の原著第6版はアラビア語、韓国語、ギリシア語、スペイン語、トルコ語、フランス語、ポルトガル語、ルーマニア語に訳されており、2014年の第7版も2015年11月時点でイタリア語、スペイン語、中国語、フランス語、ポーランド語、ポルトガル語版が出版されています。このように多くの国で翻訳されていて、知名度的には「グレイ解剖学」の方が有名ですが、普及度で言えばこちらも負けていないように思います。

この「Clinically Oriented Anatomy」を日本語訳したものが「臨床のための解剖学」であり、2019年1月時点で日本語版最新刊である「臨床のための解剖学 第2版」は原著第7版にあたります。

「臨床のために」という言葉の通り、形状的なことだけでなく、臨床と結び付けた知見が多く盛り込まれています。発達、老化、病理、運動など様々な視点と解剖学を結び付けていて、各章ごとにブルーボックスと呼ばれる青色のページがあり、そこに関連する臨床事項がまとめられています。厚さだけならグレイ解剖学とほぼ変わらないのですが、紙面からは知識を詰め込んだギッシリ感が伝わってきます。グレイ解剖学のようなスマートさはありませんが、医学に対する情熱を感じさせる、そういう解剖学書だと思います。

また、この書籍には簡略版の「ムーア臨床解剖学」があり、2018年12月時点で日本語訳第3版が出版されています。原著「Essential Clinical Anatomy」は「Clinically Oriented Anatomy」の学生向けの位置付けであり、サイズがだいぶコンパクトにまとまっています。持ち運びにはこちらの方が便利でしょう。

解剖学書選びのポイント
紹介した2冊とも優れた解剖学書であり優劣はないと思います。まとまりとバランスならグレイ解剖学、知識量なら臨床のための解剖学という印象です。グレイ解剖学(第3版)は電子書籍付属で値段も2000円ほど安く、コスパ的にはこちらが優位です。しかし、ある程度人体を学んだ専門家であれば、臨床のための- の凝縮された内容は魅力的に映ると思います。スマートな「グレイ解剖学」、意識が高めの「臨床のための解剖学」とも言えると思います。

解剖学アトラス(図譜)

「解剖学書」が図面と文章による解説なのに対して、「解剖学アトラス」は図面や写真が中心であり、主に位置関係を学ぶための教材です。セラピストや治療家にとって、これが一番開く機会が多いのではないでしょうか。多くの個性的な書籍が出版されており、図譜と写真に分けて紹介します。図譜では「プロメテウス解剖学アトラス」「ネッター解剖学アトラス」「グラント解剖学図譜」の3冊を紹介します。いずれも根強い支持者がいる解剖学アトラスです。

プロメテウス解剖学アトラス

おすすめ度 

解剖学アトラスと言って、私が最初に思い浮かべるのは「プロメテウス解剖学アトラス」です。第3版(解剖学総論・運動器系)の帯には「この美しさが最上の理解を生む」と書かれていますが、私もはじめて見た時、その図面の美しさに「こんなにきれいな解剖学書があるのか」と感心したのを覚えています。このCGの美しい図面がプロメテウスの大きな特徴のひとつです。

プロメテウスは一種の解剖学アトラスのシリーズと言えます。部位や用途別に多くの種類が出版されています。「解剖学総論・運動器系」「胸部/腹部・骨盤部」「頭頚部/神経解剖」の3冊がプロメテウスのメインであり、「コアアトラス」はメインの3冊から図面を選択するなどして、1冊で身体の全部位を網羅できるように再編集したバージョンです。「口腔・頭頚部」は歯学用にメインの3冊から関連する領域を編集したバージョンです。

「コンパクト版」はメインの3冊をそのまま縮刷したものではありません。Amazonの商品欄に”『Anatomy Flash Cards-Anatomy on the Go』の367枚のカードが、ポケット判(182mm×128mm×32mm)の単行本として登場”と書かれているように、暗記用のイラストカードを本として編集したような内容です。見開きの左側に解剖学図と部位ごとに番号が振ってあって、右側に番号ごとに名称が書かれています。テスト前に右側の答えを見ないで暗記を確認するような構成になっています。

メインの3冊を合わせるとページ数で言えば類書の中でも最大級で、その分、紙面を豊富に使うことができます。筋肉の走行を模式図で説明するなど、他の解剖学アトラスにない丁寧さがあります。そのような意味で経験の浅いセラピストでも使いやすいように思います。

反面、プロメテウスの図面は良い意味で言うと美しいのですが、少し無機質的に思います。また、全てではないですが、筋肉、血管、神経など組織ごとに図を分けていることが多いように思います。それにより、それぞれの組織単体の位置はとても分かりやすいのですが、生きた人間の様々な組織が混在した奥行きが失われているように思います。例えば、触診の時には筋肉を見つけて、そこから神経や血管の位置の目星をつけたり、その逆もあったりするわけですが、組織ごとに整理し過ぎた図では、そのような組織と組織をまたいだ位置関係を知りたい時に少し弱い部分があります。

ネッター解剖学アトラス

おすすめ度 

書籍の生みの親であるFrank H Netter(1906-1991)はニューヨーク生まれで、美術を学んだ後にニューヨーク大学医学部に入った異色の人物で、1931年に医学博士の学位を取得しました。在学中からノートに書くスケッチが教員や医師の目に止まり、論文や教科書のために挿絵を描く仕事を依頼されたほどであったそうです。

1933年から外科医になりますが、最終的に医学の道をあきらめて、画家としての道を選びます。製薬会社(ノバルティス社)の販促物のイラストを多く手がけ、これら解剖図は後に再編集され、この「ネッター解剖学アトラス」となりました。

ネッター解剖学アトラスの特徴はなんと言っても、ネッター氏のその独特の絵画タッチでしょう。絵だけ見せられても、多くの人がネッターのものとわかると思います。理解のために色を鮮やかに強調していて、後述のグラントの落ち着いた雰囲気とは対照的です。

プロメテウスやグラントと比べて、あまり組織を整理していない印象で、例えば同じ絵に筋肉、血管、神経などが混在して描かれています。これはもともと系統だった解剖学アトラスを作る目的があったわけでなく、主に薬剤の販促用など用途別に描いた解剖学図をまとめたという経緯も影響しているかもしれません。これが長所となり、組織の位置関係がわかりやすく、触診の参考になります。同じ角度から、組織を取り除いた図を並べていて、浅層、深層の位置関係も理解しやすくなっています。

セラピストの先輩の中にも「プロメテウスはきれいだけど、実際にイメージしやすいのはネッター」と、ネッター押しの人も少なくありません。

私自身、解剖で何かわからないことがあると、解剖学カラーアトラス(写真)で見て、次にネッター解剖学アトラスで確かめることが多いです。写真だとイメージはしやすいのですが、細かい位置関係がわからない時もあり、そのような時にネッターを見ます。

プロメテウスほどひとつひとつの組織を細かく解説しているわけではありませんが、立体的なイメージと臨床での使いやすさという点で優れている解剖学アトラスだと思います。

ネッター解剖学アトラス(第6版)には電子書籍付きのセットがあります。少し価格が高くなりますが、セット版では原著第6版と別冊学習の手引きに加えて電子書籍をダウンロードするためのPINコードが付いています。

グラント解剖学図譜

おすすめ度 

プロメテウスやネッターに比べると、グラント解剖学図譜はセラピストの間で不思議と名前を聞く頻度が少ないように思います。

J.C.Boileau Grant(1886-1973)はスコットランドのエディンバラ出身で、1903年〜1908年までエディンバラ大学で医学を学びました。卒業後、地元の病院勤務や第一次世界大戦での軍医経験を経て、カナダのマニトバ大学で解剖学教授、トロント大学で解剖学主任教授、同大学の解剖学博物館館長、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の客員教授などを歴任、解剖学教育に一生を費やしました。

このグラント解剖学図譜はトロント大学在籍中の1943年に初版が出版されたものです。ネッター解剖学アトラスの初版が1989年、プロメテウス解剖学アトラスの初版が2004年ということを考えると、その歴史の長さが伝わると思います(ただし、ネッターの図譜については、解剖学アトラスという形ではありませんが、1948年に図譜集が出版されていました)。その後、原著は2018年12月時点で14版を数えています。日本語版第7版は原著13版を訳したものです。

図面はネッターに比べると組織ごとに分類、整理されている印象ですが、プロメテウスに比べると生体独特の混在した質感を残しているように思います。そのような点では、ネッターとプロメテウスの中間にあると言えます。

内臓系の描写に力を入れている印象で、特にリンパ系の図が充実しています。リンパ系だけなら、分冊しているプロメテウスの胸部/腹部・骨盤部にも負けないように思います。腹腔や内臓については、見れば見るほど、よく考えられた図の配置だと感心します。その分野に関わるセラピストなら重宝すると思います。

反面、筋骨格系は他の2冊に比べるとやや少ない印象を受けます。セラピスト間でプロメテウスやネッターと比べて、あまり名前を聞かないのもそのあたりに原因があるのだと思います。

どちらかと言うとグラント解剖学図譜は、運動学よりも病理学や生理学と結びつけやすい解剖学書ではないかと思います。プロメテウスやネッターと比べると、経験の浅いセラピストにとっては使いづらいかもしれません。私自身、グラントの魅力がわかるようになったのは、キャリアをいくらか積んだ後でした。身体のことを深く勉強していくにつれて、良さがよりわかる解剖学アトラスかもしれません。

解剖学アトラス(図譜)選びのポイント
紹介した3冊はいずれも支持者が多く、どれを選ぶかは最終的には好みの問題だと思います。筋肉ごとに見やすく丁寧にフォローしているのはプロメテウスですし、ネッターは組織が混在した生体の質感を上手く表現していて、治療技術や触診のイメージを助けてくれます。グラントは内臓の描写に特に優れていて……とそれぞれに特色があります。セラピストの経験が浅いうちはプロメテウスかネッターの方が扱いやすいでしょう。反面、上級者や内臓関係を深く学ぶ必要がある人はグラントを重宝すると思います。解剖を熱心に勉強するのでしたら、3冊揃えても多過ぎることはないと思います。

解剖学アトラス(写真)

写真系アトラスの長所は、絵だと省略されたり、きれいに整い過ぎてしまうところが、実際の身体に近い状態で残っていることです。組織の質感や位置関係は写真の方が実感できます。反面、その組織が混在した構図が分かりにくいという人もいて、そのような人は図譜によるアトラスの方が良いかもしれません。

解剖学カラーアトラス

おすすめ度 

いくつか類書がある写真系アトラスですが、より局所の解剖を知りたい時、持ち運びをしたい時、もっと値段の安いものを探している時など他の選択肢もありますが、1冊で全身をフォローできる写真アトラスで、内容だけで考えるなら、この解剖学カラーアトラスが断然オススメです。なので、この記事中で唯一の星5つになっています。

本書の長所は、その見やすい解剖写真にあります。解剖した写真をそのまま撮影しただけでなく、学習者が理解しやすいように構図が工夫されています。写真とは別に図面も掲載されていて、さらに理解を助けてくれます。筋骨格系については層別に写真が撮られていて、立体的なイメージがしやすいように工夫されています。腹腔・内臓については、全体の中で位置関係が分かるような写真と、臓器単体の写真に分けて解説されています。

改訂されても中身が大きく変わらない書籍もある中で、この本は版を重ねるごとに変化が見られます。私自身、図書館で第7版と第8版を見比べて、後者の方がだいぶ見やすいと感じました。そのような点から解剖学カラーアトラスに関しては最新刊をお勧めします。

骨格筋の形と触察法

おすすめ度 

純粋な解剖学アトラスではありませんが、本書も骨格筋だけならアトラス的な使い方ができると思います。セラピストや治療家にとっては最初はこちらの方が使用頻度が高いかもしれません。

ページを開くと、層ごとに開かれた骨格筋の解剖が示されています。実際の解剖さながらにピンセットで組織を開いた構図もあり、学習者の立体的イメージの獲得を助けてくれます。タイトルの通り、骨格筋の形状だけでなく、触察の方法も丁寧に書かれています。以前、著者たちの触診セミナーに参加したことがありますが、その方法に準じています。セミナーだと時間に追われて必ずしも全てを習得、吸収できるわけではありませんが、このように丁寧にまとめた書籍があると、自分でもじっくり学ぶことができて、初学者にとってとても役立つと思います。

骨格筋がテーマの書籍なので、それにおいては他の書籍より丁寧に詳しく書かれています。しかし、写真においてそれ以外の組織はほとんど除かれているので、経験を重ねて視野が広がってくるにしたがって、解剖学アトラスとしては不足になってくると思います。靱帯や関節包といった関節組織もほとんど取り上げられていないので、筋骨格系しか関与しないセラピストや治療家でもその点が物足りなく感じるかもしれません。

アトラスとして見たので不足を並べましたが、もともと骨格筋というテーマに限定した書籍ですので、その点においては間違いなく良書だと思います。

また、巻末であまり目立たないのですが、「骨指標の触察法」という章(第Ⅴ章)があります。これが徒手療法を学んでいる初学者にとっては特に役に立つのではないかと思います。学び始めのうちは骨指標も正確に触れることは難しく、それが触診全体の精度を下げます。触診の初歩として、見直してみると良いのではないでしょうか。

なお、この書籍も初版と改訂第2版が同じ本と思えないほど、外観、内容とも変わっていますので、理由がない限りは最新刊を手に入れることをお勧めします。

解剖学アトラス(写真)選びのポイント
いろいろ発売されている写真系解剖学アトラスですが、内容から見ると「解剖学カラーアトラス」が私の断然のお勧めです。これをファーストチョイスにして、あとは必要に応じて写真系は買い揃えていけば良いのではないかと思います。経験の浅いセラピストや治療家で、骨格筋を特に詳しく学びたい方、触察法を学びたい方は「骨格筋の形と触察法」の選択も良いと思います。

動画系解剖学教材

解剖学の教材には、動画を用いたものもあります。動画の長所は、実際にメスで切開したり、ピンセットでつまんだ様子で質感が伝わってくる点や、様々な角度から映すことで、立体的な位置関係が理解しやすい点などがあります。値段が高いことや、書籍と比べて見るのに手間がかかるなど短所もありますが、有効に活用すると書籍とは違った効用があると思います。

機能解剖マニュアル(DVDまたはVHS)

NO IMAGE(現在、新品の取り扱いがありません)
おすすめ度 

もともとはアメリカの出版社「Lippincott Williams & Wilkins」が発売したビデオシリーズ「Atlas of Human Anatomy」が原形です。それをジャパンライム社が版権を得て、日本語訳したものが「機能解剖マニュアル」です。

DVDは全10巻で構成されており、①上肢(130分)、② 下肢1(75分)、③下肢2(74分)、④体幹1(74分)、⑤体幹2(75分)、⑥頭頸部1(105分)、⑦頭頸部2(121分)、⑧口腔/眼/耳(97分)、⑨胸部の臓器/生殖器(75分)、⑩腹部の臓器(87分)となっています。

映像は外科医であり臨床解剖学者でもあるRobert D. Acland(1941-2016)の解説で進んでいきます。組織を回転させながら描写する手法はAclandが開発した撮影法で、位置関係や立体的イメージを理解させる上で大きく役立っています。

検体の状態も新鮮さを幾分か保っていて見やすいと思います。乾燥しすぎた検体だと質感がわかりにくいですが、この映像では新鮮例とは言えませんが、ある程度質感を保っていると思います。

主要な筋肉についてはそれぞれ丁寧に解説していて、セラピストや治療家だけでなく、学生が勉強する上でも受け入れやすいと思います。筋骨格だけでなく血管、靱帯、神経もフォローしていますし、脂肪層や膜もよく見えますので、質感や立体的イメージを学ぶのに良い補助になると思います。

品質だけで言えば、間違いなく強くお勧めできる教材なのですが、唯一の難点はその価格で、DVD全10巻を揃えようとすると定価で20万円ほどしました。「しました」というのは、最近まで取り扱っていたのですが、現在ジャパンライムの公式ホームページで取り扱っておらず、あるいは絶版となったのかもしれません。

内容だけなら文句なく星5つですが、価格を考えて星3つの評価となりました。

Integral Anatomy Series(DVD)

おすすめ度 

当DVDのプロデューサーであるGil Hedley博士は、シカゴ大学神学校で神学倫理学の博士号を取得し、90年代初期に公認ロルファーを取得したと本人のホームページに書かれています。DVDは全4巻で次のような構成になっています。映像は実習室での解剖がメインで、それにGil Hedleyによる解説が時々加えられています。日本語版はなく英語版のみです。

vol.1 Skin and Superficial Fascia(皮膚と浅筋膜)
vol.2 Deep Fascia and Muscle(深筋膜と筋肉)
vol.3 Cranial and Visceral Fascia(頭蓋と内臓の膜)
vol.4 Viscera and their Fascia(内臓およびそれらの膜)

全体的に見て、各部について均等に収録しているわけでなく、質が高い映像の部位もあれば、それほどでもない部位もあります。位置関係を提示するというより、組織(特に膜系)の質感を伝えることを重視した感があります。複数の検体が映っていて、新鮮例の映像は特に参考になります。

英語のリスニングができればより有効に活用できると思いますが、映像だけでも学ぶところは多いと思います。解剖学アトラスを見ながら、映像を確認していくと密度の濃い勉強になると思います。「機能解剖マニュアル」と違い、局所の詳しい解剖を提示するわけではありませんが、人体の層や組織の質感を知る上で良い教材だと思います。

日本語版がないこと、内容が膜組織に偏っていること、部位によって検体の質に差があることで、星3つの評価にしましたが、それらが気にならない人にはお勧めできる教材です。

モーション解剖アトラス(DVD付き書籍)

おすすめ度 

本シリーズは、上肢・体幹(2008年6月出版)、下肢・骨盤(2009年10月出版)、脊椎(2010年10月出版)の3冊があります。出版元であるメジカルビュー社のホームページによれば、札幌医科大学第二解剖学教室で製作された「新鮮解剖体を用いたバーチュアル解剖アトラス」をDVDに収録、付属して書籍化したものです。

新鮮な検体の筋・関節を剖出しただけでなく、それを実際に動かした映像を収録しています。セラピストや治療家からすると、普段自分が行っている運動に対して、組織がどう伸張、収縮しているのか確かめることができます。

解剖学や運動学を学ぶことで、運動時の組織の動きを想像できるようになりますが、剖出した関節や筋肉の動きを見ることで、それを実際に確かめることができます。自分が想像していた動きと同じなのかそうでないのか、確かめることは大きな学びとなるでしょう。ポジションの微妙な変化で筋肉の伸張がどのように変化するのか? 主動作筋以外の組織はどのように動いているのか? 紙面では表現しきれない映像ならではの気付きもあります。

書籍のコンセプトはとても素晴らしいですが、いくつか気になる点があります。ひとつは新鮮例の解剖だけに組織の境界は必ずしも明瞭ではありません。位置関係を知るための解剖学アトラスは別に必要になると思います。二つめは動画の量がもう少し欲しいと思いました。同じ部位でも動き、層、角度など色々なバリエーションの映像を揃えてくれればもっと良かったと思います。見たい映像の傾向は人それぞれなので、それが必ずしも収録されているか懸念があります。三つめはそれらを考慮した上で1冊25000円(税別)は価格設定が少し高いように思います。それらの点で星3つの評価にしました。

動画系解剖学教材選びのポイント
動画系の解剖学教材はどれも高価なことが欠点と言えます。そのため、全てを買い揃えることは経済的な負担が大きく、購入に際しては選択に迷うところだと思います。内容で言えば最もバランスがとれているのが機能解剖マニュアル、膜系や内臓系を特に勉強したいのであればIntegral Anatomy Series、リハビリ専門職であればモーション解剖アトラスがニーズに近いと思います。しかし、考えていたものとイメージが違う可能性はあるので、できれば大学図書館などで閲覧してから購入するのが良いでしょう。

より詳しく知りたい方はこちら

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【書評】解剖学カラーアトラス第8版」「【書評】骨格筋の形と触察法
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