はじめて頭蓋を学ぶ人のために! 書籍・教材案内

おすすめの書籍・教材

ここでははじめて頭蓋治療を学ぶ人のために書籍や教材の案内をします。

今回、おすすめの星印は「初心者にとって」という視点でつけられています。いくら内容が充実していても、初心者にとって難しすぎて参考にならない場合は星は低めに設定しています。

他の記事でも書く予定ですが、書籍だけでは頭蓋治療の習得はほぼ無理です。初学者の段階ではセミナーの予習か復習に使うと思いますが、それでも慣れないうちは理解が難しいと思います。

頭蓋系の書籍でも各々傾向が少し違っていて、ここで紹介する本で悪いものはないと思います。ただし、自分が学習する対象(例えばオステオパシーなのか頭蓋仙骨療法なのか)や学習の段階で合う書籍が変わってきます。そこを理解した上で選ぶと良いと思います。

頭蓋関連の書籍

クラニオ・セイクラル・オステオパシー

《トルステン・リーム、トビアス・K・ドプラー 著/平塚晃一 監修》 ガイアブックス 3900円(税別)
おすすめ度

総論、解剖、触診、治療とコンパクトによくまとめられていると思います。特に治療や動きを感じる時の手の位置を一つ一つ写真に収めているのは、この書籍の長所であり、特徴と言えるでしょう。値段が高い専門書の中で4000円ほどで新品で手に入るのも、コストパフォーマンスが高いと思います。解剖学的な基礎も書かれています。

本の裏表紙に「頭蓋仙骨オステオパシーのすべてがこの一冊に凝縮」と書かれています。逆に全てを網羅していることで、一つ一つの内容がどれも同じテンションで、概論的という印象が否めません。それを趣旨にしていると思うので、批判は的外れなのですが、初学者の立場からすると、もう少し最初の解剖や触診のあたりを丁寧に書いてもらうと有り難かったのかなと思います。

解剖学的な基礎も書かれているのですが、それが多くが文章のみなので初学者には理解が難しいかもしれません。初期で多く時間を使うであろう蝶形後頭結合(SBS)の動きも他の部分と同じくらい、さらりと書かれているくらいで図もありません。そこも初学者にとっては大変だと思います。

このガイアブックスの本全体に言えるのかもしれませんが、あまり図での説明が得意でないのか、解剖図も多くをプロメテウス解剖学アトラスなどからの引用ですませています。そんな中、Ⅱ章図6-2(P60)のブレグマ、アステリオン、プテリオンなど指標点を簡単にまとめた図は、意外と同じようなものが他にないだけに有り難いと思います。

いくつか短所も書きましたが、今現在の私が読んでみると、過去にオステオパシーの頭蓋セミナーで習ったことはほとんどが触れられてはいます。しっかり要点を押さえた書籍だと思います。

他の書籍もそうなのですが、読んで役に立てるにはある程度の習熟が必要に感じます。

クラニオ・セイクラルリズム

《ダニエル・アグストーニ 著/高澤昌宏 日本語版監修》 ガイアブックス 4400円(税別)
おすすめ度

頭蓋仙骨療法に基づいた書籍です。実は頭蓋のコースを習う前で、書いてあることが一番理解できたのがこの本でした。アマゾンのレビューでは翻訳が悪いと書かれていますが私はそんなに気になりませんでした。たぶん、他の本がもっと難解だからだと思います 😅

本書の中で頭蓋オステオパシーと頭蓋仙骨療法の違いについて書かれた部分(1-2「起源と歴史」)があるのですが、そこで「今日行われているクラニアル・セイクラル・メソッドは、セラピー上の対話や相互的なプロセス・ワーク、共感、解決指向アプローチ(これは例えば、トラウマ・ヒーリングなどで重要)を伴います」と書かれています。

このあたりがこの書籍の傾向を表していて、後述の「頭蓋仙骨治療Ⅰ、Ⅱ」ほどだとまだジョン・E・アプレジャーが頭蓋仙骨療法を提唱してから時間が経過しておらず(あるいはアプレジャーの傾向かもしれませんが)、そこには伝統的なオステオパシーの要素が色濃く残っています。しかし、この書籍になると書かれた段階で頭蓋仙骨療法がオステオパシーと分岐して20年以上が経過していて、その独自の傾向を強く反映しています。

頭蓋治療にもどのような観点で治療するかで違いがあって、メカニカル(身体を機械的な要素で捉える)なものもあれば、ヒーリングやエネルギー的な要素を捉えることもします。オステオパシーでも両方やるのですが、初期は骨や関節の動きを感じるメカニカルの要素から入ります。

この本で書かれていることは、初心者でも入りやすいようにメカニカルが基本でありつつも、そこにヒーリングやエネルギー的な要素も含めています。そのためか、骨、関節に対する説明や細かい解剖学にはそれほど多くは触れられていません。

本の中では頭蓋仙骨系の動きを感じることに重点が置かれていて、この本の通りに試していくと肺呼吸と違う、別の動きがあるように実際に感じられると思います。

それが頭蓋仙骨療法であれば良いかもしれませんが、頭蓋オステオパシーになってくると直接は結びつかないと思います。役に立つか立たないかは別にして、これから学ぶセミナーによっても実用度が変わってくると思います。

頭蓋仙骨治療

《ジョン・E・アプレジャー、ジョン・D・ブレデヴォーグ 著/目崎勝一 訳》 スカイ・イースト 15000円(税別)
おすすめ度 原著はアプレジャーが1983年に発表したものです。解剖学的な基礎も図入りで親切に解説しています。丁寧に自分で頭蓋の動きを感じるための姿勢まで載っています😅 これを読むとアプレジャーという人は技術も高かったらしいですが、教え手としても相当優秀だったんだろうと感じます。

オステオパシーで扱う技法も多く載っていて、解説も含めるとごく初期の段階では復習にはこれが一番わかりやすいのではないかと思います。骨や関節の動きに関する記述が多く、メカニカルの内容がほとんどです。もちろん全てではないですが、頭蓋オステオパシーのベーシックコースの内容に書籍の中では近いように思います。

ただ、一冊の本としてまとめることの宿命なのか、セミナーの流れと一緒ではないので、どこを探して何を読めば良いのかは最初のうちはわかりにくいかもしれません。

また、頭蓋の動きを感じる過程はけっこうあっさりしていて、「頭に軽く触れて」という感じでどの辺りを触ればいいのか、何を指標にすれば良いのかということは書かれていません。

その点では前述の「クラニオ・セイクラル・オステオパシー」の方が少し記述が細かいかもしれません。おそらく多くの受講生が最初につまずくところであり、他のところが親切なだけにそこが目につきました。

定価ではありますが、新品を日本オステオパシー学会のホームページから買うことができます。

頭蓋仙骨治療Ⅱ 硬膜を越えて

《ジョン・E・アプレジャー 著/目崎勝一 訳》 スカイ・イースト 14040円(税込)
おすすめ度

1987年に出版されました。前著と違い内容は解剖学に終始しており、治療についてはほとんど書かれていません。その解剖学についても脳神経、頚部、顎関節と頭蓋とは少し離れています。

私自身はこの本をとても評価していて、頭蓋治療の観点からこれらの解剖をまとめた書籍はおそらく他にないのではないかと思います。脳神経、頚部、顎関節とも頭蓋や身体全体と大きく影響します。

解剖学を重視する治療者で、学習を深めていくならいずれ手に入れて良い書籍だと思います。なので、書籍としての評価は星5つなのですが、頭蓋の初学者から見ると必要性は低いので星1つになっています😓

こちらも定価ではありますが、たにぐち書店や日本オステオパシー学会のホームページから新品を購入することができます(リンクは日本オステオパシー学会のページを貼っています)。

クラニオ・セイクラル・バイオダイナミクス

《Franklyn Sills 著/高澤昌宏 訳》 エンタプライズ出版社 16000円(税別)
おすすめ度

この本自体はどちらかと言うとエネルギーやヒーリング的な要素を多く含んでいて、その点では初学者にはあまり向かないかもしれません。

一方で「クラニアル・コンセプトと第一次呼吸メカニズム入門」「組織の自動性入門」「続・組織の自動性」「蝶形後頭結合の動き入門」という項を設けていて、そこでは蝶形後頭結合、頭蓋骨、膜の動きなど解剖や運動学的要素に多くのページを割いています。図もとてもわかりやすいです。

私が頭蓋コースをはじめて受講した時はアプレジャーの「頭蓋仙骨治療」はまだ持っていなかったので、この本を見ながら解剖や動きについて勉強していました。

エネルギーやヒーリング的な要素の記述も多いので、受講する内容や学習の段階によっては合わない点もあるかもしれません。その点に留意する必要がありますが、役に立つ部分もあると思います。

頭蓋領域のオステオパシー 初版

《ハロルド・アイヴス・マグーン 著/ユキ・C・タニ 訳》 日本オステオパシー連合 15000円(税別)
おすすめ度 前述の「クラニオセイクラル・オステオパシー」にはこの書籍について「長らく頭蓋仙骨オステオパシーの教科書とされてきた。初版はサザーランドの口添えと推薦があったが、第2版(1966年)と第3版(1976年)はサザーランドの死後に出版された。頭蓋オステオパシーが広く認知されるよう、サザーランドのバイタリティの理念の大部分は削除された」とあります。

著者のマグーンはサザーランドの弟子で、この書籍はマグーンがサザーランドの講義を受けた時のノートがもとになっていると聞いたことがあります。また、同じくサザーランドの弟子であるヴィオラ・フライマンは日本で出版するにあたって初版の翻訳を勧めたと言います。

この本ですが、現在は日本オステオパシー連合(日本オステオパシー学会、全日本オステオパシー協会、関西オステオパシー協会)が購入の窓口になり、会員のみに販売しているようです。そのためかオークションなどですごい高値がついていることがあります。

教科書的な存在だったとは言え、初学者には難解な書籍だと思います。文字が多く、図は見やすいとは言えません。理解にはそれなりの素地が必要だと思います。定価で買う機会があれば良いと思いますが、少なくても習い始めの人はあわてて高値で買う必要はないと思います。

頭蓋縫合

《マーク・G・ピック 著/前田滋 訳》 スカイ・イースト 15000円(税別)
おすすめ度

頭蓋の縫合だけで厚い本ができるなんてと、とても感動した記憶があります。

頭蓋の動きを考える時、当然、関節面に沿って動くわけですから、縫合の理解も大切です。部位によって縫合の形状も違っていて、動きがそれぞれ変わりますし、縫合自体に治療を加える時はその形状に合わせて圧や牽引をかけていく必要があります。

本の中には縫合の解剖学や触診の方法、治療まで書かれています。

これだけでは3次元的な縫合の形状を理解することは難しく、模型があった方が望ましいと思います。しかし、ポイントを知る上で書籍は役に立ちますし、多くの知見を与えてくれます。解剖、運動の項目だけでなく、マニピュレーションの方向を知ることで、そこからも動きの特徴を知ることができます。解剖、運動、治療と、様々な角度から縫合を取り上げることで、理解する上で大きな助けになっています。

とても良い本だと思うのですが、頭蓋の書籍の中でも、特に専門的な一部分を取り扱ったものだと思います。果たして、初学者が選択する本としておすすめなのか? という点で星2つにしています。

頭蓋分解模型(組み立て可能)

頭蓋模型にも色々なタイプがありますが、まず組み立て可能で骨ごとに分解できるものが欲しいです。

3分解や5分解ではなく、もっと細かく分かれるものが良いです。色がないタイプと骨ごとに色分けされたタイプがありますが、それはどちらでも構わないと思います。色分けされたタイプの方がわかりやすいですが少し値段が高くなります。

選ぶ基準は人それぞれだと思いますが、私の場合は組み立てやすさと値段です。精巧さについては確かめる手段がないですが、ソムソ社や3B社の方が信頼はあると思います。しかし、組み立て可能ということで縫合面については細かい再現はできないので、そこまで差はないようにも思います。

※ 製品のマイナーチェンジなどで形状が変わることもありますので、その点を理解した上で購入をお願いいたします。

ソムソ社製

おすすめ度

ドイツのブランドで最も値段が高いです。製品にはメーカーのマークが入っていますので、オークションなどで買う時はそれを確認するようにしましょう。ただ、ソムソ社の頭蓋骨の色分けは他のメーカーと少し違うので、慣れてくると見ただけでも区別がつくと思います。

はじめて頭蓋を習う時は、おそらく頭蓋骨の位置関係などわかっていないと思うので、分解模型で確認するのが最も良い勉強になると思います。
上のバナーをクリックしてもらうと、いくつか商品が出てくると思います(私がこのリンクを作った時点ではAmazonの取り扱いはありませんでした)。14分解か18分解のものであれば大丈夫です。

組み立てる時の凹凸の形状にもソムソ社製には特徴があります。比較的組み立てやすいと思います。

3B社製

おすすめ度

3B社も本拠地はドイツのブランドであり、日本支社など世界各地に法人を作っています。ソムソ社より価格が少し安い傾向があるのはそのような企業の規模が影響しているのかもしれません。

色はマルチカラーとナチュラルカラーの2種類あります。22分解であれば大丈夫です。

(引用:日本スリービー・サイエンテフィック株式会社ホームページ https://www.3bs.jp/model/skull/a291.htm)

組み立てに関して、3B社の場合は写真のようなピンクネクターを多く使用しているのがひとつの特徴です。

その他のブランド

おすすめ度

人体模型というと老舗はソムソ社と3B社のイメージですが、その他にもメーカーはあります。値段的にそちらの方がお手頃です。

この頭蓋分解模型は私も使用しています。部分によって凹凸、マグネット、3B社のようなピンコネクターで組み立てます。ソムソ社や後述のマグネット式に比べると組み立てに手間はかかります。しかし、組み立てられないことはありませんし、教材としてそれ以外のデメリットはあまり感じません。何より予算に限りがある中で、この値段はとても魅力的に思います。

マグネット式頭蓋模型

おすすめ度

ブランド名はわからないのですがマグネット式の頭蓋模型が販売されています。組み立てが簡単ということで、私が学んでいる先生も勧めていました。値段も他のメーカーに比べてそこまで高くありません。短所は持った時に強い圧力をかけると形が崩れることですが、頻繁に分解するのであれば、組み立てやすいというメリットはとても大きいと思います。

Amazonや楽天では取り扱っていないので、Yahoo!ショッピングのリンクを貼っておきます。

頭蓋分解模型を簡単にまとめると
【組み立てやすさ】マグネット式→ソムソ社→3B社・その他
【分解の細かさ】3B社・その他・マグネット式→ソムソ社
【価格】その他→マグネット式→3B社→ソムソ社

頭蓋分離模型(組み立て不可)

頭蓋分解模型と違うのは、こちらは組み立てることができません。デメリットのように聞こえますが、組み立てる必要がないことで縫合を忠実に再現できます。

私は本物の頭蓋骨を分解したものも見たことがあるのですが、分解模型とは全然違って形がいびつだったことが印象に残っています。この商品も模型ですから本物と同じわけにはいきませんが、組み立てを前提としているものに比べるとずっと本物に近づけることができます。

形状のイメージがしっかりできることで治療の精度も上がると思うので、手に入れるチャンスがあればぜひ手に入れたいところです。

需要が少ないためかソムソ社しか製作しておらず、値段も桁違いに高いので簡単に手には入れられないと思います。ジャンク品でも良いので、オークションなどで安価で出品された時に購入を検討したらどうかと思います。私も一度出品されているのを見たことがあります。
こちらも現在、Amazonでは取り扱っていないようです。

おすすめ度