写真の解剖学アトラスを何冊か紹介しようと思ったのですが、いくつか見直してみて、この「解剖学カラーアトラス」が頭ひとつ抜けていると思い、今回はこの書籍だけを紹介します。
1985年に初版が刊行されて以来、版を重ねて、2019年1月現在で第8版が最新刊です。著者はJohannes W.Rohen(Erlangen-Nürnberg大学名誉教授)、横地千仭(神奈川歯科大学名誉教授)、Elke Lütjen-Drecoll(Erlangen-Nürnberg大学教授)の3先生です(肩書きは刊行当時)。外国の書籍に押されがちな解剖学において、これだけの書籍の中に日本人著者がいるのはなんとも誇らしく思います。
写真系アトラスの長所は、絵だと省略されたり、きれいに整い過ぎてしまうところが、実際の身体に近い状態で残っていることです。組織の質感や位置関係は写真の方が実感できます。
反面、その組織が混在した構図が分かりにくいという人もいて、そのような人は図面によるアトラスの方が良いかもしれません。
私が最初に買った解剖学アトラスはプロメテウスで、次がネッターでした。この2つはほとんど同時期に買っています。その後、徒手療法を熱心に学ぶようになってから、組織の質感や位置関係をより知りたくなり、写真のアトラスを探すようになりました。そんな時、図書館で偶然「解剖学カラーアトラス」を見つけて、それが購入のきっかけになりました。
写真か図面、どちらの解剖学アトラスが良いか選ぶには、自分の好みや学習段階を考えると良いでしょう。しかし、いくつかの記事で繰り返しているように、解剖学書は複数あった方が学習の助けになるので、写真のアトラスも1冊くらいは手に入れても良いのではないでしょうか。
さて、今回の解剖学カラーアトラス(第8版)ですが、私が自宅で最も開くことが多い書籍です。
より局所の解剖を知りたい時、持ち運びをしたい時、もっと値段の安いものを探している時など他の選択肢もありますが、1冊で全身をフォローできる写真アトラスで、内容だけで考えるなら、これが断然オススメです。
解剖学カラーアトラスの長所は、その見やすい解剖写真にあります。解剖した写真をそのまま撮影しただけでなく、学習者が理解しやすいように構図が工夫されています。
筋骨格系についても、層別に写真が撮られていて、立体的なイメージがしやすいように工夫されています。
腹腔・内臓については、全体の中で位置関係が分かるような写真と、臓器単体の写真に分けて解説されています。他の部分と同様に図面が理解を助けてくれます。
改訂を重ねている書籍では、毎回購入していては経済的に大きな負担になります。それに必ずしも大きな変化があるわけでもありません。しかし、解剖学カラーアトラスに限っては改訂後との変化が大きく、第7版から第8版にかけても写真や図面に大きな違いがあります。私は実際に図書館で第7版と第8版を見比べましたが、あきらかに後者の方が見やすく充実しているように思い、そちらを購入しました。第8版の完成度はかなり高いように思います。もし、これから購入するのであればそちらをお勧めします。