【書評】骨格筋の形と触察法

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前回、写真系解剖学アトラスのお勧めとして「解剖学カラーアトラス」を紹介しました。今回はセラピストや治療家向けに骨格筋に特化したアトラスを紹介します(厳密には解剖学アトラスとして編集されたものではないですが、その用途としても使用できる書籍だと思います)。

編者は河上敬介先生(大分大学福祉健康科学部)と磯貝香先生(常葉大学保健医療学部)です。(所属は2019年1月時点)。初版が1998年、改訂第2版が2013年に出版されています。

アマゾンのレビューを見ると高評価が並んでいますが、その評価に違わない質の書籍だと思います。初版と改訂第2版が「同じ本?」と思うくらい、外観が変わっていて、もしこれから購入するなら、断然、第2版がお勧めです。

上が初版、下が改訂第2版。厚さ(情報量)だけでなく、ハードカバーとなり装丁、外観の雰囲気もだいぶ変わっている。

ページを開くと、層ごとに開かれた骨格筋の解剖が示されています。実際の解剖さながらにピンセットで組織を開いた構図もあり、学習者の立体的イメージの獲得を助けてくれます。タイトルの通り、骨格筋の形状だけでなく、触察の方法も丁寧に書かれています。触察を解説したページでは、体表にマーカーで印をつけた写真が載っています。以前、著者たちの触診セミナーに参加したことがありますが、まず骨指標に印をつけて、その上で筋肉の位置を確認していました。その方法に準じています。

背筋群の解剖。実際の解剖のようにピンセットで開いた構図も見られる。(改訂第2版)

体表にマーカーで印をつけて位置を示している。手順が丁寧に書かれている。(改訂第2版)

骨格筋がテーマの書籍なので、写真においてもそれ以外の組織はほとんど除かれています。アトラスとして使うとすればその点で不足がありますが、もともと骨格筋だけの書籍と割り切れば、それほど不満にならないのかもしれません。

肩周囲筋の解剖。書籍全体を通じて骨格筋以外の組織はほとんど除かれている。(改訂第2版)

巻末であまり目立たないのですが、「骨指標の触察法」という章(第Ⅴ章)があります。これが徒手療法を学んでいる初学者にとっては特に役に立つのではないかと思います。学び始めのうちは骨指標も正確に触れることは難しく、それが触診全体の精度を下げます。触診の初歩として、見直してみると良いのではないでしょうか。

第Ⅴ章「骨指標の触察」より。初学者には触診の初歩として大切な部分となる。(改訂第2版)

初版と比べると、改訂第2版が格段に充実しているのは間違いないのですが、扱われている写真が変わっているので、用途によっては初版の写真が優れている時もあります。私などはブログを書いていますので、時として「初版の方がこの組織はしっかり写っている」という体験もしています。もちろん改訂第2版を最初に購入すべきと思いますが、初版はオークションなどで大きく値崩れを起こしていますので、用途に合わせてそちらも揃えても良いかもしれません。

改訂第2版と比べると、写真、図版ともに大きく掲載されている。第2版に転用されているものもあるが、初版にしか掲載されていないものも多い。(写真:初版)

編者の河上敬介先生と磯貝香先生は「体表解剖学研究会」のセミナーで講師を務めています。興味のある方はそちらに参加してみても良いでしょう。
一般社団法人 体表解剖学研究会のホームページ(外部リンクです)