パーキンソン病のリハビリ関連書籍(パーキンソン病のメカニズムとリハビリ⑬)

おすすめの書籍・教材

ここでは、これまでのパーキンソン病に関する記事で紐解いた書籍をいくつか紹介します。実際に読んでみた感想なので、これからパーキンソン病について調べたい人においても何らかの役に立つと思います。

パーキンソン病の診かた、治療の進めかた

著者:水野美邦
出版年:2012年
出版社:中外医学社
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順天堂大学名誉教授の水野美邦先生の著書です。先生の臨床経験と文献に基づいて、パーキンソン病の知識が網羅されています。歴史、発生機序、病理、臨床症状、治療まで全体的に分かりやすく書かれています。内容については、先生の経験に基づくためか、一部他の書籍と見解が違う部分も見られるのですが、逆に言うと経験的なところまでしっかり踏み込んで書いてくれているので、臨床像がイメージ豊かに伝わってきます。良書だと思います。

図説 パーキンソン病の理解とリハビリテーション

著者:山永裕明、野尻晋一
出版年:2010年
出版社:三輪書店
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装丁だけ見ると、一般向けのイラストをたくさん含めた入門書かなと思わせるのですが、内容は専門的にかなり詳しく書かれた本です。歴史、発生機序、病理、臨床症状、治療まで書いています。著者の山永先生がリハビリテーション専門医、野尻先生が理学療法士、介護支援専門員だけあって、リハビリや介護的なこともイラスト入りで多く触れられています。環境整備や制度的なことまで書かれていて、よくここまで書いたものだと感心します。実際にリハビリをしている人が書いたのだと感じることができる良書で、真面目に読めばその分返ってくるものがあります。実際のリハビリ訓練の記載については、これほど知識があっても内容については目新しいものがなく、ある意味ではこれが書籍にする上での限界なのかなとも思わせます。実際に臨床で行う訓練について知りたいだけが目的なら、少し本書とは趣が異なるかもしれません。

上述の水野先生の著書と合わせて読むと、かなり概略的にパーキンソン病のことが分かるのではないかと思います。

機能解剖で斬る神経系疾患

著者:中野隆
出版年:2018年
出版社:メディカルプレス
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著者の中野隆先生は愛知医科大学の教授で、専門学校時代に解剖学を習ったことがあり、その分かりやすさは講師陣で文句なく1番でした。主に神経系を教えていたのですが、講義の特徴は神経の解剖学を配線のように模式図で説明するところでした。どことどこが繋がってとか、どこで伝導路が交差してなど走行を図でわかりやすく説明していただきました。

この書籍も神経を走行で説明して、どこが障害されると、ここの機能が低下して……というような観点から多く書かれています。非常に論理的で分かりやすい書籍だと思います。

構成が第Ⅰ章「随意運動伝導路の機能解剖」、第Ⅱ章「体知覚伝導路の機能解剖」、第Ⅲ章「小脳と非意識型深部覚伝導路の機能解剖」……というように、機能解剖ごとにまとめられています。パーキンソン病については第Ⅴ章「錐体外路系伝導路の機能解剖」にまとめられていますが、その中でも若干記述が点在している部分があります。本の構成的に独特な部分があり、その人の検索の仕方によっては少し読みにくい部分があるかもしれません。

通じて読めば神経疾患のメカニズムが相当に理解できると思います。

傾いた垂直性

著者:網本和(編集)
出版年:2017年
出版社:ヒューマン・プレス
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脳血管疾患を担当することが多いセラピストなら、一度はpusher症候群を見て不思議に思ったことがあるのではないでしょうか。身体の垂直性が崩れているというのは説明できるのですが、そのメカニズムについては私も詳しくは知りませんでした。これはそのような、多くのセラピストが疑問に持つひとつの症状について掘り下げた意欲的な書籍です。この中に「パーキンソン病の垂直性」という章があって、身体の傾きに関して大いに参考にさせてもらいました。

パーキンソン病の医学的リハビリテーション

著者:林明人(編集)
出版年:2018年
出版社:日本医事新報社
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本のタイトルを見てたいへん期待をしたのですが、私の考えている書籍とは少し内容が違いました。上で紹介した「パーキンソン病の診かた、治療の進めかた」や「図説 パーキンソン病の理解とリハビリテーション」はほとんど個人が執筆していて(後者は共著ですが)、内容はその主観や経験に基づく部分にまで踏み込んでいます。そこが臨床像のイメージを豊かにしていた部分でもあるのですが、この書籍については分担執筆していて、スタンダードを守ることを優先させて、結果的に当たり障りのない内容を記述するにとどまった感があります。おそらく経験のある方々が執筆していると思うので、ページ数の問題もあったのかもしれませんが、もう少し踏み込んで書いてほしかったと思います。

概略的に読むには良い本で、早期治療やリハビリの効果についての箇所はたいへん参考になりました。

カンデル神経科学

著者:Eric R Candel etc(著)、金澤一郎 他(監訳)
出版年:2014年
出版社:メディカル・サイエンス・インターナショナル
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このブログの他のところでも紹介していますが、神経学における名著です。こちらも分担執筆なのですが、それぞれがその専門性をいかんなく発揮していて、十分過ぎるほどの読み応えがあります。パーキンソン病について専門的に書いた箇所はありませんが、主に正常な神経機能を知るために参考にしました。書籍については下記の記事が詳しいので、興味があれば参考にしてください。

→参考記事:「カンデル神経科学を科学する

まとめ

パーキンソン病の記事で参考にした主な書籍を紹介しました。リハビリの具体的な内容についてはあまり書かれていませんが、それはここで紹介した本以外でも同様なように思います。それはパーキンソン病だからと言って特別な内容があるわけではなく、普段の運動療法にパーキンソン病の特質を考慮して加えるというのが本質なのだと思います。それはどのような疾患のリハビリでも言えることで、経験のあるセラピストなら分かっていただけると思います。そのような意味で、今回のシリーズ記事のように機能解剖や発生機序を知ることはとても重要だと思います。

さて、今回で長く続けてきたパーキンソン病についてのシリーズ記事も一区切りにしたいと思います。機能解剖や発生機序を知れば知るほどリハビリの限界を感じましたが、それらを知ることでより効果的なリハビリに近づくのも事実だと思います。現時点では微力かもしれませんが、少しでも苦しむ人の力になれるように、知識を広げ研鑽を積むことが大切だと思います。

また新たな内容を記事として書き加えることもあると思いますが、ひとまず、ここまで読んでいただいたことにお礼を申し上げます。ありがとうございました。