治療者における書籍との付き合い方

おすすめの書籍・教材

一般的にセラピストや治療家というのは、どのくらい人体に関する書籍(解剖学書、生理学書、運動学書など)を持っているのでしょうか?

最近、理学療法士の後輩に解剖学書の話をしたら、学校の時に買った1冊しか持っていないと言われました。私は10冊以上持っているので、そう話すと「なんでそんなに持ってるんですか?」と驚かれました。

私からすると、なぜ1冊で足りるのか、そちらの方が不思議なのですが、そこは勉強の仕方の違いかもしれません。

解剖学、生理学、運動学だけでも、テーマや切り口で多くの書籍が出版されています。解剖学書を例にあげると、純粋な解剖学書とアトラスでは若干用途が異なりますし、アトラスでもイラストと写真のものがあります。入門者向けに総論をわかりやすく書いたものもありますし、ごく一部の専門職が対象のマニアックな内容のものもあります。

書かれている知識を受け取るだけなら、書籍は多くは必要ありません。しかし、調べ物をしたり、臨床で感じた疑問の答えを自分で追究したりするなら、書籍はたくさんあった方が助けになります。

細かい組織だと、あの本には載っていたけど、この本には載っていないなんてこともありますし、解剖学アトラスでは見る角度によって組織の印象が違うので、写真やイラストは多いに越したことはありません。
生理学のメカニズムは、私にとって難しく理解するのに苦労するのですが、そのような説明の仕方も書籍によって違うので、いくつか本があると理解の助けになります。

私の場合は、総論的な書籍に加えて、必要に応じてより専門的なものや、役に立ちそうなものを揃えています。欲しいもの全てを買っていては、とてもお金が足りませんが、解剖、生理、運動など各分野で気に入ったものを2〜3冊 は持っていても良いのではないでしょうか。

経験を重ねるに連れて、書籍との付き合い方も上手になります。最初のうちは本に書いてある知識を受け取るだけですが、そのうち疑問の答えを探すための「字引的」な使い方もできるようになります。

自分から答えを探すようになると、今まで読んでいても気に止めなかった部分が、自分の臨床において大きな意味を持つことに気付きます。書いてあることは同じでも、そこから意味を見いだして臨床と結びつけることができるようになります。

高い金額を出して買った本で役に立った部分がたった1行だったとします。でも、その1行が人生でとてつもなく大きな意味を持つ時もあります

これは実はセミナーでも一緒で、漫然と受けているうちは気が付かなくても、こちらから答えを探して来ていると、何かと結びつく時があります。そして、1日勉強してたったひとつしか心に響かなかったとしても、その1つがとてつもなく大きな意味を持つ時があります。

学びとは必ずしもすんなりとはいきませんが、それだけに面白いものとも言えます。

セラピストだからといって必ずしもその分野から書籍を選ぶ必要もありません。「手術のための〇〇解剖学」というような本でしたら、皮膚や組織を切開した図も多く載っています。表層から深層にかけて組織の層のイメージを持つのに良いかもしれません。薬理学の本を読めば薬は神経や臓器にどのように作用しているのか、逆にそこから正常な身体というものは何なのか考えることができます。

専門書でない本にも良いものがあります。講談社のブルーバックスシリーズは、医学を含む難解な科学を一般者向けにわかりやすく説明してくれますし、NHKの人体に関するDVDなども身体を大まかにイメージする上では良いかもしれません。

そのように学ぶ過程も自分で考えてクリエイトしていった方が楽しいのではないかと思うのです。

今後、おすすめの書籍や教材を紹介することもあると思いますが、そこからは私の学びの傾向、あるいは偏向が垣間見えると思います。ひとつの学びの形として興味本位で見てもらっても良いですし、書籍選びの参考にしてもらっても嬉しく思います。