手技が上達しなくて悩んでいる人に伝えたいこと

成長のための心得

いろいろな講習会に行ったけど・・・・・・

・いつまで経っても上達した感触がない
・実技でいつもついて行けなくて困る
・臨床でなかなか結果が出ない
・自分には治療の才能がないのではないかと思っている

などなど、ここではそのような人に向けて、自分の経験も含めてお話しできればと思います
この記事はこれからブログを続ける上での私の原点でもあります。

私自身とても不器用で、講習会の実技で自分だけできないという体験を何度もしました。新人のセラピストができるのに自分ができないという経験もあり、そのあまりの出来なさに、惨めで陰で涙を流したこともあります。これは比喩ではなくて本当の出来事です。

実技の時間は、他の人が練習を終えても私は自信がなかったので、一人だけになっても時間ギリギリまで続けていました。それは習慣となって、今でも実技の時間は大切に最後まで感覚を確かめています。

どんな分野でも”才能”はあると思います。

故人となりましたが昔、将棋の米長邦雄永世棋聖が「将棋の経験が全くない奥様を50人集めてルールを覚えさせれば、その瞬間から1番から50番まで差がつく。1番強い人と1番弱い人では2枚落ちくらいの差がつくこともある」と話していたことを思い出します。

治療の技術においても、聞いたことをすぐに理解して実践できる人もいますが、逆に何回聞いても、練習してもなかなか習得できない人もいます。

最終的に大きく伸びるのは当然、前者のように思いますが、私はいくつかの事例や自身の経験から、両者に差はないと考えるようになりました。

私が治療を教えていただいている先生の一人は、その分野においては知識、技術ともに日本で最高の方だと思っています。しかし、その先生にしても習い始めの頃は「才能がないからやめた方がいい」と先輩から言われたそうです。この事実が教えてくれるのは、学習のプロセスにおいて上達が感じられなかったり、すぐに結果が出なかったとしても焦る必要はないということです。私自身、経験しているので断言できますが、努力を積み重ねていけばおのずと結果は出てきます。

学習の結果は正比例のように右肩上がりには表われません。そのため、成果を感じられず、途中でやめてしまう人もいますが、それはもったいないことです。
学習曲線では、成果が見られない停滞期が続いた後に、ある時、急激な上昇が現れます。

それは今までわからなかった感覚が「もしかして、これかな?」と感じたり、頭の中にあった複数の概念が一つに結びついたり、今までになかった視点で物事が見られるようになったり、その形は様々です。共通しているのは突然来るということです。

この急な上昇が起きる点をティッピングポイントと呼ぶ人もいます。臨界点、閾値とも言い換えることができます。この場合は刺激やエネルギーが蓄積し、変化が起こるその瞬間のポイントと考えれば良いと思います。

私の場合は、今まで先生から教えてもらっていたことが急に頭の中で整理がつき、系統立てて考えられるようになりました。自分の中に一本の幹のようなものができて、新しい知識はそこに肉付けという形で吸収できるようになりました。学習が系統立てられたことで、自分のできること、できないことも把握しやすくなりました。

自分のことがわかるようになると、必要以上に卑下することもなくなりました。それからは不思議と自分が”できない”と思わなくなりました。学ぶことが楽しくなり、今できないことも「どうすればできるようになるのか」「いずれ自分はできるようになる」と思えるようになっていきました。

実際のところ、今までできなかった手技はできないままで、治療成績が急に良くなったわけでもありません。今でも自分がそんなに上手だと思いません。時々、伸び悩みも感じます。

それは小さな変化だったのかもしれませんが、その小さな変化がその後に生み出す差は大きいのだと思います。自分の前に道があったとして、左右どちらかの方向にほんの5度だけ角度を変えて歩いたとします。最初はたった少しずれていただけなのに、距離が進むにつれて元の道との距離はどんどん広がっていきます。

ティッピングポイントはそのような小さい変化でありながら、大きな差を生み出す分岐点とも言えます。そのような小さな変化を繰り返すことが成長の本質なのでしょう。

おそらくこの小さな変化は誰にでも生み出すことができます。

もちろん、成長過程は人それぞれであり、環境によって学習に当てられる費用も時間も違います。
成長する速度に差はあるかもしれませんが、努力は無駄になることはありません。

手技が上達しなくて悩んでいる人がいるとしたら… もしそれが心から学びたいものであるなら、あきらめないで続けてほしいと思います。