色々なセミナーに行くけど結果が出ないセラピストのために

成長のための心得
理学療法士のAさん(卒後2年目)の場合
理学療法士のAさんは卒後2年目です。臨床で能力不足を感じるけど、自分ではどのように学べば良いかわからず、セミナーへの参加を思いつきます。

ネットで調べるとたくさんのセミナーが検索に引っかかり、Aさんは興味のある膝のセミナーに行くことにしました。

セミナーでは膝の解剖学から実技まで丁寧に教えてくれました。講師の話すことは実に説得力があり、1日学んだことに充足感を覚えました。これなら効果が出そうだと気持ちが高揚するのが自分でもわかりました。

セミナーから帰った翌日、さっそく習った技術を臨床で使ってみました。試してみたいので、来る患者様に次々と使ってみました。いつまでも膝を触っているので、それだけで訓練の時間が終わってしまうこともありました。

しかし、思ったような効果は出ませんでした。数日間繰り返しましたが、やはり効果は出ないままで、そのうちに最初にあった関心はなくなり、また元の治療スタイルに戻りました。

Aさんはネットを調べて、また別のセミナーに行こうと考えています。

いかがでしょうか? もしかしたら、同じような経験をした方もいるかもしれません 🤔

私も以前、良さそうに思うセミナーに片っ端から参加している時期がありました。あんまり多くて、数えてみたら9週連続で出席していたなんてこともありました(全部違う内容のセミナーです)。

その時のことを思い出すと、成長したい一心で一生懸命、週末に出かけていました。しかし、臨床で充足した気持ちがあったかと言えばそうではなく、自分が成長した感覚もありませんでした。患者様が変化することもなく、自信もあまりありませんでした 💦

その時点でそれなりの経験年数を積んでいましたが、もっと良くできるんじゃないか、本当は治せるんじゃないかという思いが常にありました。渇望するような感覚です。

その渇きを癒す方法を、外部のセミナーに求めていたように思います。しかし、その渇きがなくなることはありませんでした 😣

たくさんセミナーに参加したことで良かったこともたくさんあります 😊

もちろん多くの内容が臨床で役に立ちましたし、そうでないものでも一度学んでいると、記憶のどこかに残ります。そのような知識が背景にあることで、本来であれば思い付かなかった閃きが生まれたり、別の知識と結びついて考えもしなかった発想が生まれたりします ⭐

セミナーや講師の質について、見る眼を養うこともできました  👀
出会った受講生同士で人脈ができて、多くの情報が入ってくるようになりました。今、継続して学んでいる治療法は、もとをたどるとそこから得た情報です。

私がもし、現在学んでいる治療法に最初に巡り会っていたとしたら、もしかしたら学び続けていないかもしれないと思います。なので、本当のところ何が幸いするかは分かりません。これも自分の人生で、縁だと思います。

でも、はっきり言えるのは学びに無駄はありません。迷ってもがいた時期も後から何かの役に立つはずです。そこであきらめずに、成長したい気持ちをなくさないでほしい ✋ と思います。

なぜ臨床で結果が出ないのか?

たくさんセミナーに参加するのは悪いことではありません。世の中には多くの治療法を学んで、どれもそれなりに習得できる人がいます。目的を持って、きちんと学びを得ているならとても良いことだと思います。そうではなく、やみくもにセミナーに出てしまう人というのは、私と同様に自信がなく、臨床でも結果が出ていない人ではないでしょうか。

私の場合、振り返ってみると、自分の歩んできたプロセスに無駄はなかったのですが、効率が良かったか? と言えばそれはあまり良くなかったと思います。

今、考えてみると、上手くいかなかった時にはそれなりの原因があったように思います。今回は自分の経験も踏まえて「セミナーに行くけど結果が出ない理由」について、分析と解決のための考え方をまとめたいと思います 😅

基礎ができていない

技術や手技を習っても、しっかり再現できないと結果は出ません。講師と同じようにしたつもりでも思うように効果が出ないとすれば、まず考えられる原因が2つあります。

  • 治療するべき場所が違う。
  • 技術が未熟である。

前者は教わったことができていても、治療する場所が間違っているケースです。例えば、膝に痛みがあったとしても、そこが原因ではないことは臨床的によくあります。

ロルフィングという治療概念を創始したアメリカのアイダ・ロルフは「痛みがあるところに、原因となる問題はない」という言葉を残しています。

原因が他にあって膝の痛みは結果に過ぎないとしたら、膝を治療しても効果は出ないか、すぐに元に戻ります。
また、適応が違う場合もあります。関節包や靭帯が問題であるのに、筋膜の治療をしているような状態がそれに当たります。
このような事態は 理論が理解できていなかったり、評価ができていないことで起こります。

後者は多くの原因が考えられますが、基礎ができていないという要因も大きな1つです。
この場合の基礎とは、解剖、生理、運動学など知識的なものもありますが、触診や自身の身体の使い方など技術的なものもあります。

両方とも一朝一夕で身に付けられるものではなく、一生研鑽が必要かもしれませんが、治療を向上させる上で必須のスキル☝ なので地道に積み重ねていきましょう。

臨床と学習したことを結びつけていない

学びを身に付けようと思うと、実践は欠かせません。習った直後は臨床で試すことも多いと思いますが、結果が出ないと徐々に使わなくなるのではないでしょうか。
上手くいかないと、つい慣れた手法に戻してしまいがちですが、これと信じた治療法であれば根気強く使っていってほしい と思います。

実践の方法もいくつかあります。学んだうちの扱いやすい部分だけ使うのも方法ですし、上手くいかなければ習った内容をなるべく原形に近い形で使うのも手段だと思います。
なまじ経験があると、手技にアレンジを加えたり、過程を省略したりしがちですが、習得が不十分な段階で形を変えるのはデメリットもあります。

歌舞伎など古典芸能では最初に「型」を覚えます。学習の初期の段階では、形をそのまま覚えた方が効率良いと考えられているからです。「型」には長い時代で培われた本質が詰まっており、それを繰り返すことで能力の基盤が身に付きます。

治療の形にも意味があり、それを十分に理解せずにアレンジすることは、本来得られる効果や学びが損なわれる可能性があります。

✍自分の環境に合わせて使う方が有効な場合もあれば、愚直に習ったままを実践する方が有効な場合もあります。

実践の進め方も様々なので、上手くいかない場合はその視点や方法を考えてみると良いと思います。

原理を理解していない

治療法には原理があります。それは治療法によって異なることも共通することもあります。そのため、ある治療法に精通していることで、他の治療法も習得が早いという現象が起こり得ます。

原理が分かっていないと、一見、講師と同じ動きをしているようでも、それは似て全く違うものになります。効果も出ないか低いものになるでしょう。

また、原理を体得していると応用が可能ですが、そこが欠けていると、少しの患者様の変化や環境が変わるだけで、同じ効果を出せなくなります。また、自分でテクニックを考えることが難しく、いつまでも教えてもらわないといけません。

少し前に古典芸能と「型」の話が出ました。学習の初期で形から学ぶのは良い方法ですが、いつまでも漫然と真似ているだけでは不十分です。次のステップとしてそこに含まれている意味を考えることが、効果を出す上で大切になります。

自分と学ぶ内容が合っていない

例えば、整形外科のクリニックに勤めている人が、中枢神経の治療法を学んでも、実践の機会は少なくなります。
また、色々なセミナーに参加した中で感じたことですが、職種によって相性の良い技術があるように思います。取り込みやすい技術と言っても良いかもしれません。
私は理学療法士なので、理学療法士が考案したり、国内に持ち込んだ技術の方が仕事に馴染みやすいように思います。

しかし、仮に職種と合いにくい技術だったとしても習得は可能です。私自身、現在学んでいる治療法は、仕事の中で取り入れやすいとは思いませんし、学習の過程で戸惑いや上手くいかないことが多いです。それでも時間が経つにつれて成長を感じますし、自分が習いたいと思ったものですから頑張れます 💪

もし、セミナーに行ってもなかなか向上しないのでしたら、学んでいる内容が自分の職種や環境に合っているか考えてみるのも良いでしょう。そこでミスマッチがあるようでしたら、方針を転換するのも手段ですし、普段取り入れるためにどうすれば良いか工夫しても良いと思います。

意識や工夫をするだけでも学習の効果はだいぶ変わると思います。

まとめ

ここまで色々な気付きを書きましたが、いずれもすぐに身に付くものではありません。
実際に試してみて、疑問を持ち、考え再び試してと、試行錯誤してはじめて血肉となります。さらに言うと、その疑問や試行錯誤を持ってまたセミナーに参加すると、得られるものが大きいと思います。

何かを習得しようと思えば、継続して学ぶことが最も有効です ⭐

場合によっては同じセミナーに再び参加するのも良いと思います。臨床で活用した後に行くと1回目と違った発見があるはずです。

多くの実績を残している治療者も最初からできたわけではなく、このような地道な作業を経て 今の状態を築いています。

逆に言えば、1日や2日で手に入る技術で簡単に治療ができるなら誰も苦労はしません。替えはいくらでもききますし、業界自体の必要性も疑われます。容易に身に付かない技術だからこそ貴重であり高い対価が発生するのです。

セミナーにも様々なスタイルがあります 📚
単発や1日でのセミナー、長期間かけてひとつのテーマを学んでいくコース方式のセミナー、習得状況に応じて段階が設定されたステップアップ方式のセミナーなどがあります。

それぞれ長所も短所もあります。
単発や1日のセミナーでは気軽に参加ができますし、はじめての受講生を念頭に置いているので、学びの導入に良いと思います。一方で、学べる量に限りがありますし、臨床で実践した後、その疑問を確かめる機会もありません。

コース方式やステップアップ方式では継続して学べるのが良いところです。しかし、費用や時間が多くかかりますし、セミナーによっては継続している受講生がほとんどで、最初のうちは入りにくいかもしれません。

今の自分に必要な内容や向いている形式を考えて選択していくことが大切です。学ぶ過程をプロデュースしたり、クリエイトしていく感覚が芽生えると、より学びが前向きになり楽しくなっていくと思います 🌻

どのセミナーでも、何かをくれるのを待つのではなく、こちらから何かを求めて受講することです。目的意識が明確だと、求めるものと出会う確率は確実に高くなります。

繰り返しになりますが、これと決めた治療法であれば、あきらめずに学び続けてほしいと思います  😊