初学者のための頭蓋治療入門

オステオパシー

頭蓋領域の治療は、徒手で行う治療の中でも特に専門性が強く難解に思われています。理学療法士にしても治療家にしても、学生時代にその解剖すら多くは学んでいないはずで、それがそのような思いをさらに強めていると思います。

その神秘性や劇的な効果に期待をして習得したいという希望者も多いですが、その難しさに挫折してしまう人も多いと思います。ついていけない理由はいくつかあると思いますが、ひとつは頭蓋領域に関する知識が大きく不足していることがあげられます。それは、解剖、生理、運動などの医学的な基礎知識もそうなのですが、学ぶ方法や全体像がわかっていないという意味でも言えます。

頭蓋領域の治療はもともとオステオパシーから生まれたものです。オステオパシーの発祥の地・アメリカの医科大学では、頭蓋治療はひと通りの基礎が終わってから学びます。段階を経た後か、卒後学習的な位置づけなのです。その前段階となる基礎的な内容が理解できていないと、頭蓋領域の治療もまた理解が難しいという考え方です。

前段階である学習や背景も知らずにいきなり頭蓋治療を学ぼうとすると、はじめて聞く医学的な知識や、求められる高い触診技術など、とにかく多くの課題に突き当たります。そこで多くの人がついていけずに挫折してしまうのではないかと思います。

実際のところは前提となる「基礎」も簡単に習得できるものではありません。そのあたりをいくらか学んでいたとしても、頭蓋治療が難しいことに違いはありません。1回の受講で出来るようになると考えず、何回もコースのセミナーを受けて、実践を繰り返す中で習得を目指すのが良いと思います。

私自身も何回かコースのセミナーを受講しています。同じことを何度か学んでいますが、それでも成長はゆっくりで、とても「わかった」「できた」とは言えない段階です。

ここでは頭蓋治療を学ぶ前、あるいはいきなり壁に突き当たった時にあると助かる(と思われる)知識について、自分の経験も踏まえて書いています。

実技的な内容のさわりも書いていますが、それだけで理解するのは難しいと思います。頭蓋治療は書籍だけで習得はまずできません。治療法を生み出した人間もいるので絶対とは言えませんが、ほとんどの人間はセミナーを受講する中で習得するものだと思います。

あくまでどのような勉強をするのかというガイドブック的な役割と、受講したセミナーの補助的な役割です。

それでも、全く頭蓋治療に触れたことのない人にとっては役に立つのではないかと思います。

まえがきの最後として、頭蓋治療については私もまだ初学者であり、十分な実績を積んでいるとは言えません。書いてある内容は十分ではないでしょうし、経験を積んだ先生からすれば未熟な点も多く目につくと思います。
初学者の方においては少し先に学んだ人間からの助言と思っていただき、諸先輩方においては寛大な心で見ていただけるとありがたく思います。

頭蓋治療の歴史と背景

頭蓋治療の始まりについては、書籍によって若干の違いはあるのですが、ウイリアム・ガーナー・サザーランド(William Garner Sutherland:1873-1954)が現在の基盤を作り、発展させたことは例外なく一致しています。

サザーランドはアンドリュー・テイラー・スティルの初期の教え子で、スティルが創設したミズーリ州カークスビルのアメリカンスクール・オブ・オステオパシーを1899年に卒業しています。

スティルとオステオパシーについてはこちら
参考記事:「オステオパシーとはなにか

学生のサザーランドは分解された頭蓋骨を観察するうちにあることを思いつきます。それは蝶形骨と側頭骨鱗部の間の縫合部分で、それはまるで魚のエラのように見えました。なぜ、このような独特の形をしているのか? 考えるうちにこれらの縫合の形状は呼吸メカニズムのための関節構造なのではないかと思うようになりました。

しかし、当時の解剖学の文献には頭蓋骨の縫合は固定されて動かないと一様に書かれていました。サザーランドもこの荒唐無稽な思い付きを忘れようとしますが、その後も何度も頭に思い浮かびます。

彼は学校を卒業後、ミネソタ州で開業しましたが、その後30年をこの頭蓋骨の研究に費やしました。頭蓋の動きが阻害されると何らかの症状が出るという仮説のもと、頭蓋骨の動きを制限するヘルメットを設計して自分の身体で実験します。妻の協力を得ながら、丁寧に身体の反応を観察して記録し、頭蓋病変を作り出したり、治したりを繰り返しました。30年間の最後には、診断と治療の理論を患者に応用することに成功します。

頭蓋治療に対して当初、世間は全く相手にしませんでした。文献は拒絶されて、1932年のアメリカ・オステオパシー協会(American Osteopathic Association:AOA)の全国大会での講演でさえ反応は冷たいものでした。しかし、診断治療の結果には誰も反論できず、徐々に頭蓋治療は認知されて、1940年以降には一般的に受け入れられるようになりました。

学ぶ人間が増えるにしたがって組織が形成されるようになります。オステオパシー・クラニアル協会(Osteopathic Cranial Association:OCA)は研究の助成、調査の支援、書籍や教育体制の整備に取り組みました。その組織は後にクラニアル学会(Cranial Academy)と名称を変えて、アメリカ・オステオパシー学会(American Academy of Osteopathy:AAO)傘下の構成団体となりました。クラニアル学会は再び、もとのオステオパシー・クラニアル協会に名称を変更して現在に至っています。

ウイリアム・ガーナー・サザーランド
(「オステオパシー総覧(下巻)」エンタプライズ より引用)

頭蓋治療=頭蓋仙骨療法ではない

日本では頭蓋治療というと「頭蓋仙骨療法」が有名です。頭蓋仙骨療法はDO(Doctor of Osteopathic Medicine:オステオパシー医師)のジョン・E・アプレジャー(John E. Upledger: 1932-2012)が開発した治療法です。

アプレジャーはもともとミシガン州立オステオパシー医科大学の生体力学科の教授で、1985年にアプレジャー・インスティチュートを設立しました。

アメリカで発展した頭蓋のオステオパシーは原則としてDOかMD(Doctor of Medicine:医師)にしか受講を許されていませんが、頭蓋仙骨療法は門戸をそれ以外の職種に拡げました。

頭蓋仙骨療法は「バタフライタッチ」と呼ばれるようなごく優しいコンタクトで治療します。オステオパシーでも不必要な圧力はもちろんかけませんが、しっかり圧をかける直接法(後述)的な治療も存在します。頭蓋仙骨療法ではそのような治療は行いません。

直接的な方法では治療者の技術によっては逆に身体に害を与える可能性があります。アプレジャーは当然、オステオパシーの頭蓋テクニックを習得しており、そのような方法も熟知していました。自身の臨床では直接的な方法も扱っていたという話もあり、頭蓋仙骨療法ではリスクを最小限にしているのだと思います。

日本では頭蓋仙骨療法=オステオパシーのように紹介している書籍もあります。しかし、サザーランド直系の頭蓋コースでの話ですが、ある受講生が「頭蓋仙骨療法は頭蓋オステオパシーではない。言い直しなさい」と激しく叱責されたというエピソードもあり、伝統的なオステオパシーにとっては全くの別物という認識なのだと思います。

アプレジャーもそこは理解していて、アプレジャー・インスティチュート・ジャパンのホームページにもオステオパシーという言葉は出てきません。

頭蓋仙骨療法の是非は私に論じられるところではありません。それとは別に頭蓋仙骨療法は頭蓋治療のひとつではあるがイコールではないということだけ、ここでは整理しておきたいと思います。

頭蓋は全身の中の一部である

その特殊性から頭蓋治療がひとつの独立した分野のように捉えられていると感じる時がありますがそうではありません。

オステオパシーには「身体は一つのユニットである」という原則があります。頭蓋も身体の一部であり各部位と影響し合っていると考えます。頭蓋の問題によって他の身体の部位に問題が起こることもありますし逆も然りです。それを私たちに強くメッセージさせるサザーランドのエピソードがあります。

サザーランドは頭蓋領域のオステオパシーが体幹・四肢と離して論じられることに不満を持っていて、1947年の講座では頭部とそれ以外の身体のオステオパシーとのつながりを強調しました。その中でサザーランドを熱心に信奉する受講生たちが、もっと頭蓋の治療法についての講義をしてほしいと要望しました。サザーランドは激怒し「君たちは首を切って頭を投げ捨ててしまうこの業界の人々と同じくらいひどい」と嘆いたと言います。そう言わせるほど当時は頭蓋治療が一種のブームになり、偏った治療が多かったのだと推測されます。

オステオパシーにはいくつかの学派があり、その中には他の身体の部位をしっかり治療すれば、頭蓋領域はそれだけでかなり良い状態に改善するという考えもあります。

いずれにしても、頭蓋を治療すればあらゆる症状が改善するという免罪符のような存在ではなく、身体全体の確かな評価が必要ということだと思います。

頭蓋を学習する前に何を揃えれば良いのか?

繰り返しになりますが、書籍だけで頭蓋治療を習得するのはほぼ無理です。

初学者の段階で書籍が役に立つのはセミナーの予習と復習の補助でしょう。しかし、予習と復習も慣れないうちは簡単ではありません。私も頭蓋のコースを受ける前にいくつか本を買って予習しましたが、どこを読めばいいかわからず、最初から順番に読んでみたものの難し過ぎてすぐに挫折しました。

書籍の構成とセミナーの順序は違うので、復習にしても最初のうちは学んだ箇所が書籍のどこに当たるのか、それを探すことも難しく、なかなか上手く進まないと思います。

何回か受講して、わからないなりにセミナーの内容を復習して理解を深めていくと、書籍の意味や上手な使い方もなんとなくわかっていきます。

書籍よりもまず欲しいのは頭蓋骨の分解模型です。それも骨ごとに細かく分解できるものが望ましいです。頭蓋を学ぶ時に多くの人が難しく感じるのは、学生時代を通じて頭蓋領域に触れる機会がほとんどなく、解剖に不慣れという点がまず大きいと思います。

セミナーでも少しは解剖に触れますが、その場だけではほとんどの人が理解できないと思います。

頭蓋治療ではその評価も含めて、まず頭蓋の動きを感じるプロセスが必要です。それには正確な頭蓋骨の立体イメージを持つことが求められます。頭蓋骨を構成する蝶形骨、後頭骨、前頭骨、頭頂骨、側頭骨、頬骨、篩骨、鋤骨、上顎骨などの位置関係を、縫合も含めて理解する必要があります。

その学習のために頭蓋骨の分解模型が大きな助けになります。立体的な位置関係は、書籍よりも三次元の模型の方がよく伝わります。解剖図を見ながら分解と組み立てを繰り返すことでより理解が深まると思います。

まとめると、頭蓋治療を学ぶためにはまず頭蓋骨の分解模型が欲しいです。それに加えて予算や必要に応じて書籍を購入しましょう。書籍と頭蓋骨の模型については下の記事にまとめましたので、よろしければ参考にしてください。

参考記事:「はじめて頭蓋を学ぶ人のために! 書籍教材案内

頭蓋治療の学習の流れ

以前、頭蓋オステオパシーのベーシックコースを録画した映像を見たことがあります。アメリカで行われたもので、サザーランドの弟子・ヴィオラ・フライマンが講義をしていました。

そこでは、まず頭蓋領域の基礎的な解剖学が説明されていました。頭蓋全体の形状、構成する各骨の形状、骨指標、頭蓋底の解剖、血管、神経の走行、縫合などです。続いて、頭蓋の生理的な動きについて説明されます。頭蓋骨の屈曲・伸展、外旋・内旋の動き、硬膜を介した頭蓋と仙骨の連動した動き、蝶形後頭結合の病変パターンなどです。それらの動きを実際に実技で感じるようにします。

さらに全体的な治療の考え方、治療テクニックの原理や意味、骨や縫合ごとの詳細な解剖学、治療など、この後も続いていきます。

日本で行われている頭蓋オステオパシーの基礎コースでも流れは概ね一緒です。

頭蓋治療の概要、解剖学的な基礎、頭蓋と仙骨の動きなどを学び、自分の手でその動きを感じる練習をした後、全体的な治療から側頭骨、前頭骨、頭頂骨など各部位ごとの治療へと続きます。

多くの人が最初の段階である、解剖から頭蓋の動きを感じるところまでで、すでに躓いているように思います。

そこは頭蓋を学ぶ上で大切な部分なのですが、セミナーではそんなに多くの時間を与えられません。アメリカでは頭蓋を学ぶ人というのは、ドクターであり基礎的な知識や技術は持っていることが前提なので、そのような時間配分になっているのだと思います。

ベーシックコースの構成は、頭蓋を学び続けると、やはりよく考えられたものだと感じます。しかし、限られた時間内にカリキュラムをこなす都合上、日本ではじめて学ぶ人にとってはスケジュールが厳しいかもしれません。

この記事では、頭蓋の解剖学、生理的な動き、動きを実際に実技で感じるところまでを理解しやすいようにフォローしたいと思います。内容をそのまま伝えることはできませんが、予習や復習が行いやすいように、考え方や捉え方、自己学習の方法論など、私の経験や感じたことをもとに紹介したいと思います。

頭蓋と解剖学

アメリカの正式なベーシックコースは合計40時間です。その内容の全てを見たわけではありませんが、フライマン先生の講義は科学的で哲学的でありながら、実学として伝わるものがありました。

話す内容の一つ一つが、解剖学や発達学と密接に結びついて、そこに豊富な臨床経験を交えて語られます。そこにはなんの無理も感じられず、実に自然に理路整然と述べられます。

豊潤な土壌から素晴らしいワインが生まれるように、先生の豊かな経験と人間性から凝縮されたエッセンスを受け取っているような感覚で、さすが伝説のオステオパスの講義だと感じさせました。

頭蓋を特殊なものに考え過ぎると、解剖学と臨床の結び付きが想像しにくいかもしれません。しかし、他の部位の治療と違う部分もありますが、共通の感覚で捉えられる部分も多くあります。

筋・骨格系の評価において、筋肉や膜組織の緊張や関節のアライメント異常により、局所の循環障害が起こり痛みや問題を引き起こすことは、経験を積んだ治療者なら頭に浮かぶと思います。頭蓋でも似たような現象が起こります。

例えば、頭蓋底に多く見られる孔の中には複数の骨から形成されるものがあります。頚静脈孔は側頭骨の錐体部と後頭骨の頚静脈突起との間にできた通路です。そこには舌咽神経、迷走神経、副神経、内頚静脈が通過しています。
眼窩は前頭骨、頬骨、篩骨、蝶形骨、涙骨、上顎骨、口蓋骨から形成される窪みです。そこには眼窩と頭蓋内を結ぶ3つの穴があり、視神経管、上眼窩裂、下眼窩列と呼ばれ、それぞれ神経や血管が走行しています。

もし、縫合が歪み、骨同士の位置関係が崩れたらどうなるでしょうか? 複数の骨で構成された神経や血管の通り道が、そのような影響を強く受けるのは想像に難しくありません。

左図:頭蓋骨模型を尾方から見た写真。矢印は頚静脈孔。側頭骨と後頭骨で形成されています。
右図:眼窩。複数の骨から形成されていることがわかります。

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脳の静脈は硬膜静脈洞に集められて、さらに静脈洞は内頸静脈に集められます。内頸静脈は頸静脈孔を通過するのは前述した通りです。硬膜静脈洞には上矢状静脈洞、下矢状静脈洞、直静脈洞、横静脈洞、S字静脈洞、後頭静脈洞、海綿静脈洞などがあります。

脳の循環の上で大切な静脈洞ですが、四肢で見るような血管壁があるわけではありません。静脈洞は硬膜の外葉と内葉の間に作られた間隙です。写真の解剖学アトラスを見てもらうと分かりますが、硬膜の一部の空洞を指しています(例えば、大脳鎌には上縁に上矢状静脈洞があり、下縁には下矢状静脈洞があります)。

このような解剖から、膜の問題においても脳の循環が大きな影響を受けることがよくわかります。

神秘的なイメージがある頭蓋ですが、解剖学をしっかり学ぶと、体調不良の起こるメカニズムや治療の機序は全く不思議ではないように思います。これらはあくまで一例ですが、頭蓋と解剖学を結びつけるイメージの助けになれば幸いです。

オステオパシーと頭蓋のつながり

伝統的な頭蓋の学習カリキュラムは、基礎医学やオステオパシーの基本が出来ていることを念頭に置いています。

カイロプラクティックや理学療法など、オステオパシー以外の分野でも頭蓋治療を使うことはありますが、学習の段階においては、オステオパシーの素地や理解があった方が吸収しやすいのではないかと思います。

オステオパシーのどのような要素が頭蓋の学習に関わるのでしょうか?

伝説のオステオパス・ロバート・C・フルフォードは、学生時代に何枚もの毛布に包まれた骨を触って、どこの骨か識別する練習や、一本の髪の毛の上に紙を重ねて指でなぞり、髪の毛の場所を識別する練習を課せられていたと著書「いのちの輝き」で書いています。

アメリカのオステオパスは学生時代からそのような修練を積んでいます。それが手で治療を行う上で根底にある基礎だからです。

頭蓋領域の治療において、感じないことには何も始まりません。そして感じるだけでなく識別することも必要になります。脊椎にしても四肢にしてもオステオパシーは繊細な触診能力を必要とします。それを習得している、あるいは多く経験しているというのは、頭蓋を学ぶ上で大きなプラスになるのだと思います。

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治療やそれにともなう身体の感じ方や捉え方も、オステオパシーと他の分野で大きく違う部分があります。オステオパシーの治療手技は大きく3つに分けることができます。直接法、間接法、中立法です。

例えば、ある可動域に制限のある関節の治療をする時、制限のある(動かない)方向に動かすのが直接法です。ストレッチやモビライゼーションを思い浮かべてもらうとわかりやすいと思います。多くの理学療法士が行う関節可動域訓練もこれに当たります。

それに対して間接法は制限のある方向とは反対(動きやすい)方向に動かします。

この効用の機序については様々な考え方ができると思います。神経学的に言えば、可動域に制限がある関節というのは何らかの組織の緊張があり、それには神経インパルスの過剰発射が伴っています。間接法はそのような組織を弛緩する方向に持っていくことで、インパルスの信号をおさえて、組織の緊張を抑制し、結果的に可動性を増大させることを可能にします。

物理的な考え方で言うこともできます。ひずみを直す時に目的の方向と反対に動かすのは時に効果的で、タンスの引き出しが引っかかった時、一時的に押してから引いて上手くいった経験はないでしょうか。
絡まったコードをまっすぐにしたいからといって引っ張らないはずで、たいていは一度ゆるまる反対方向に動かして解くはずです。

このように対象の組織によって、効用の機序はいくつか考えられるのですが、ここでは制限のある方向と反対方向に動かすのが間接法と考えてください。

制限のある関節、あるいは組織には、動きにくい方向と動きやすい方向があります。その中間点(中立点、バランスポイントなどと呼ばれます)に保持するのが中立法です。

注意しなくてはいけないのは、全可動域において、数値的な中間が必ずしもポイントではありません。組織の緊張がどちらの方向においても均等な地点であり、最も緩まる点であり、そこから動かそうと思うと、どちらの方向にもより抵抗が強くなる位置です。

そのようなポイントを保持すると、組織が緩んだり、新たな自発的な動きが出てきたりします。

その機序については私自身、まだよく解釈していないのですが、バランスポイントはその身体の現状において、最も無理なく動きを出しやすい状態だと考えられます。病的な状態だと、組織的に緊張が不均衡であったり、ある方向に偏っていたりしますが、そのような状態を補正することにより、身体が自身の活動力や治癒力を発揮できる状態に促しているのではないかと考えています。

オステオパシーの治療は、直接法、間接法、中立法を使い分けるか、あるいは組み合わせて使います。

直接法は多くの治療者にとって慣れた技法ですが、間接法や中立法は馴染みが乏しく、その感触をイメージしづらいと思います。そこから伝わってくる組織の反応は、直接法とは違った感覚です。

頭蓋治療でも間接法や中立法をよく使います。間接法や中立法という名称が出てこなくても、その感覚を求められることはとても多いです。そのような感覚的な経験を身体の他の部位でも積んでいるオステオパスは、頭蓋を学ぶ上で大きなアドバンテージを持っています。

頭蓋とオステオパシーの学習は、もともとは繋がっていたもので、その繋がりをなくして頭蓋だけ学習しようとすると、戸惑いや難しさが出てきます。頭蓋領域の治療といっても、そこだけ特殊なことをしているのでなく、他の身体の部位と共通する背景や原理があります。

普段扱っていない知識や技法については、すぐには適応できません。前提となる知識や技術が不足しているとしたら、すぐに理解できなかったり、学習についていけなかったとしても、不思議なことではありません。

逆を言えば、頭蓋治療の習得に特殊な才能は必要ありません。最終的にどのくらい極められるかは個人差が出ると思いますが、努力を続ければ、少しずつでも上達していきます。どのような人でも分からないところから、何回も経験を重ねて、感覚をつかんでいくものです。

最初はなかなか習熟が感じられないかもしれませんが、そのような要素もあると考えて、焦らずに学習を続けてもらえたらと思います。

頭蓋骨の生理的な動き

頭蓋骨には屈曲・伸展、外旋、内旋の動きがあります。屈曲・伸展は蝶形骨、後頭骨、篩骨、鋤骨といった頭蓋底の正中部に直線に並んだ骨の動きを指します。外旋・内旋は頭頂骨、前頭骨、側頭骨といった左右、対になっている骨の動きを指します(前頭骨はオステオパシーでは左右対になっていると捉えます)。
屈曲と外旋が一緒に動き、伸展と内旋が一緒に動きます。

蝶形骨と後頭骨の軟骨結合が蝶形後頭底結合(SBS)です。屈曲時は蝶形骨は前方に傾き、後頭骨は後方に傾きます。SBSは上方に移動します。伸展は屈曲したものが元に戻る動きを指します。

左図:SBSの屈曲 蝶形骨は前に傾き、後頭骨は後ろに傾きます。SBSは上方に移動します。
右図:SBSの伸展 屈曲時の動きが元に戻ります。

頭蓋骨の「歯車」(「クラニオセイクラル・バイオダイナミクス」エンタプライズ出版部 より引用)

歯車の図のように、蝶形骨や後頭骨と正中線上にある篩骨や鋤骨も、SBSの屈曲・伸展と一緒に動きます。歯車のように隣り合う骨同士は反対方向に回転します。どちらの方向に動くから屈曲あるいは伸展ではなく、一連の動きとして「屈曲」「伸展」を捉えます。

正中構造の骨の屈曲・伸展にともなって、対構造の骨は外旋・内旋と動きます。外旋時、頭頂骨は下端が外に開くような動きをします。両頭頂骨間の縫合は下側が開いて少し沈むような動きをします。側頭骨は外旋時、上面が外側に開き、少し後ろに傾くような動きをします。内旋はいずれも外旋から元に戻る方向の動きです。


上図:頭頂骨の外旋
下図:側頭骨の外旋・内旋(左が外旋、右が内旋)
(いずれも「クラニオセイクラル・バイオダイナミクス」エンタプライズ出版部 より引用)

頭蓋における脳硬膜は後頭骨大孔から出て脊髄硬膜としてつながっています。脊髄硬膜は脊髄を囲み硬膜管を形成します。硬膜管は第2頚椎、第3頚椎の椎体および第2仙椎に付着をします。この硬膜管の付着により、頭蓋骨の動きに伴って仙骨も動きます。SBSが屈曲すると、仙骨は後ろに傾き、少し頭側に持ち上がります。伸展時はそれが元に戻る方向に動きます。仙骨も頭蓋の概念においては屈曲・伸展と呼びます。

脳仙随のメカニズム。矢印は生理的動きの屈曲期における運動方向を示す。
(「オステオパシー総覧(下巻)」エンタプライズ より引用)

はじめのうちは図だけではなかなかイメージがつかみにくいかもしれません。私の場合、学び始めの時期はyoutubeで投稿されている動画もよく眺めて参考にしていました。動きをすべて忠実に再現しているかは微妙なので(例えば、上の動画と下の動画では側頭骨の外旋の動きが違います)、自分が学んでいるテキストや資料と照らし合わせながら、あくまでイメージをつかむための補助として使用してもらうと良いと思います。

縫合の触診

ここでは頭蓋骨のいわば関節部分にあたる「縫合」の触診方法を学びます。
縫合を触診できないと、頭蓋の各骨の位置がわかりませんし、感じた動きを解釈することができません。
縫合は自分の頭を触りながら感触を確かめることができます。実習するパートナーがいない時も、そのような練習を重ねて精度を高めるようにしましょう。
感覚をつかむまでは、最も感覚が繊細な指腹部で触診するようにします。

ナジオン~前頭縫合~ブレグマ

まず最初に鼻の上部に手を触れて、鼻骨と前頭骨の横方向の縫合を触れます。これは鼻の上部を上下に動かすと容易に感じることができると思います。前頭鼻骨縫合の正中点をナジオンと呼びます(①)。ナジオンの少し上に指を移すと、鼻骨の上、前頭骨の下部にはかすかに縫合が残っていると思います(②)。

左図:ナジオンの上に指を移動します。前頭縫合の跡が一部残っています。
右図:さらに上部へ。人によっては前頭縫合の感触を感じることができます。

さらに頭頂骨に向けて正中方向に指をゆっくり移動します(③)。前頭縫合は新生児には存在しますが、成人でも10%ほどは残っていると言われています。私も触ったことがあります。前頭縫合の位置を頭頂骨に向けて、上に指を移動させていくと小さなくぼみに行き着きます。これが矢状縫合と冠状縫合の会合部であるブレグマです(④)
左図:前頭縫合の跡をさらに上に移動します。
右図:小さなくぼみに行き着きます。矢状縫合と冠状縫合の会合部「ブレグマ」です。

ブレグマ~冠状縫合~プテリオン

ブレグマを冠状縫合に沿って移動していくと(⑤)、頭頂骨・前頭骨・蝶形骨の交点に行き着きます(⑥)。さらに蝶形骨の上端に沿って後ろにたどっていくと、頭頂骨・側頭骨・蝶形骨の交点(⑦)に当たります。このふたつの交点を結ぶ一帯を「プテリオン」(⑧ 水色で囲った部分)と呼びます。

※ プテリオンの定義については、「頭蓋仙骨治療」(スカイ・イースト出版)では「前頭骨・頭頂骨・蝶形骨・側頭骨の連結部」としており、「クラニオセイクラル・バイオダイナミクス」(エンタプライズ出版部)では、上記の二つの交点付近を丸で囲んでいます。プテリオンをある1点のように紹介している場合もありますが、ここではこの2冊の書籍を参考に上記のように説明しています。
ブレグマから外側に冠状縫合をたどると、プテリオンに触れることができます。

プテリオン~鱗状縫合~アステリオン

プテリオンから後ろに縫合をたどっていくと、側頭骨上縁の弯曲した縫合(鱗状縫合:⑨)があります。プテリオンを構成する4つの骨は重なり合っていて、内側から外にかけて前頭骨(frontal)、頭頂骨(parietal)、蝶形骨(sphenoid)、側頭骨(temporal)とアルファベッド順になっています。側頭骨と頭頂骨には段差があるので、上から下に指を滑らせると特に感触が分かりやすいと思います。
側頭骨の鱗部と乳突部の移行部あたりで、人によっては縫合が急に角度が付く場合があります(⑩)。くぼみっぽい感触が触れる時もあり、アステリオンと勘違いすることがあります。アステリオン(⑪)は頭頂骨、後頭骨、側頭骨の交点です。乳突部の後端までいかないと後頭骨とは接しません。鱗部と乳突部の移行部から縫合を少し後方にたどった部分がアステリオンです。
左図:側頭骨鱗部と乳突部の移行部(示指の部分)とアステリオンを間違わないように注意。
右図:その部分より少し後ろにアステリオンがあります(中指の少し上の部分)。

アステリオン~ラムダ縫合~ラムダ~矢状縫合~ブレグマ


アステリオンから後内上方にラムダ縫合(⑫)をたどります。このあたりでは上項線など後頭骨の横方向の凹凸に惑わされないように注意しましょう。ラムダ縫合と矢状縫合が交わる点がラムダ(⑬)です。ラムダからは上の方向に矢状縫合(⑭)をたどります。冠状縫合との交点であるブレグマに再び戻ります。
ラムダ縫合をたどってラムダへ。矢状縫合を上にたどるとブレグマに戻ります。長い縫合をたどる旅はこれで終わりです。

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縫合の触診は、頭蓋を学ぶ上で最初に覚えるべき実技です。これがわからないと自分が何を触っているのか、頭蓋がどのような位置関係にあるのか、どのような動きをしているのか感じることができません。

幸いに縫合は自分の身体でも触ることができます。自分の身体で感触を確かめて、実技や臨床の場でもしっかり触診できるようにしましょう。

動きを感じる

縫合の触診ができるようになったら、頭蓋の動きを感じてみましょう。頭蓋を触ってみると、肺呼吸が伝わって動くのとは別の動きがあることを感じられると思います。胸式呼吸と似ていますが、それが大人で1分間に12~16サイクルなのに対して、頭蓋で感じられる動きは10~14サイクルと少しゆっくりめです。あるいはもっとゆっくりに感じるかもしれません。

サザーランドはこの動き、あるいは機能を「基礎呼吸メカニズム」と名付けました。基礎呼吸メカニズムは次の5つの要素から成り立ちます。

  • 脳、および脊髄の固有の運動
  • 脳脊髄液の波動
  • 頭蓋内および脊髄内の膜の可動性
  • 頭蓋骨の関節の可動性
  • 腸骨間の仙骨の不随意な可動性
基礎呼吸メカニズムは、肺呼吸を二次呼吸と呼ぶのに対して「一次呼吸メカニズム」と呼ばれることもあります。これについて記事で詳細に説明するのは難しいので、より深く知りたい方は成書にあたっていただくとして、ここでは肺呼吸とは別に呼吸と形容されるような生命の活動があると理解していただければ良いと思います。基礎や一次と名付けられたことからもわかるように、生命において肺呼吸よりもより根源的な機能だと捉えられています。

”頭蓋治療=特殊”という構図のように、基礎呼吸メカニズムも身体の他の要素から独立した存在のように感じられますが、そうではありません。筋骨格系、呼吸循環系、消化器系など全身と密接に影響し合っています。

例えば、仙骨が筋骨格系の何らかの問題で動きを失うと、硬膜管を介してSBS(蝶形後頭底結合)の動きにも影響し、基礎呼吸メカニズムを阻害する可能性があります。これは逆も起こり得ます。

このような動きは実は頭蓋だけでなく全身で感じることができます。そのような動きというのは、上に書いた5つの要素が複合して、私たちの手に伝わっているということが言えます。

基礎呼吸メカニズムを感じる

被検者にはベッドに背臥位で寝てもらい、術者はなるべく自然な直立位で座るようにします。床に足をしっかり着けてください。頭蓋の動きは微細なので、自分に力が入っていると感じることができません。ベッド面の高さを調整できれば良いですが、無理な場合は姿勢を調整しましょう。私の場合もベッドが低くて調整ができないため、頭蓋の施術の時はつま先を立てた正座で、ベッドに肘をついて行っています。肘をベッド面につくことで手の力が抜けるので、より頭蓋の動きを感じやすくなります。

慣れてくればどのような姿勢でも基礎呼吸を感じられるのかもしれませんが、最初の動きがわからない時期は自分の姿勢に気を配ることもとても大切になると思います。

頭蓋の手の当て方は様々な方法があります。目的によっても変わってきます。今回は頭蓋冠ホールドという方法を紹介します。

術者は被検者の頭側に位置して肘をベッド面につきます。両手を頭部の両側から当てます。
示指のDIP(遠位指節間関節)がプテリオンに当たるくらいで、中指と環指は耳の前方、後方に当てます。小指は後頭骨に当てます。両母指は頭部の上方で無理のないように置きます。
このコンタクトの長所は、母指は前頭骨と頭頂骨、示指は蝶形骨、中指と環指は側頭骨、小指は後頭骨と、多くの骨の動きが把握できるところです。反面、手の大きさによってはコンタクトするために無理がかかってしまい、かえって頭蓋の動きを感じにくくなる可能性もあります。いろいろなコンタクトの方法があるのはこのような理由もあります。

頭蓋は屈曲時に前後径が減少し横径が増加します(横に長くなります)。伸展時には前後径が増加し横径が減少します(前後に長くなります)。顔は屈曲時に上下に短くなり横に長くなります。伸展時は上下に長くなり、横は短くなります。手に感じる動きとしては、屈曲時は横に広がり、指は広がりながら足の方向に引っ張られます。伸展時は横は縮み、指は狭まりながら手前に戻ってきます。

左:最大伸展時の頭蓋の動き 右:最大屈曲時の頭蓋の動き(「頭蓋仙骨治療」スカイ・イースト より引用)

頭蓋骨の位置関係がわかっていて、適切にコンタクトできていると、より詳細に動きが伝わってきます。例えば頭蓋冠ホールドで示指と小指に意識を向けると、SBSの動きをより感じられるようになります。この際、圧をかけるわけではないことに注意してください。特定の指先に圧を加えると動きを阻害しますし、かえって動きを感じにくくなります。

はじめのうちは肺呼吸とは違った動きがあることだけ感じるかもしれません。わかるようになるプロセスは個人差があります。しかし、遅いからといってその人の能力が低いかというとそうではないように思います。すごく優秀に思う治療家の方がいるのですが、その人は頭蓋の動きがわかるようになるまでずいぶん時間がかかったと聞きました。と思うと、それほどキャリアが長くない方でもすぐに感じる人もいます。

焦らずに積み重ねてやっていくことが大切だと思います。

SBSの歪みパターンを感じる

SBS(蝶形後頭底結合)は軟骨結合であり、そこには動きがあります。SBSは蝶形骨と後頭骨の間に存在し、頭蓋底の中心に位置します。膜の主要な付着部であり、SBS自体に問題が起こることもありますし、縫合や他の部位の問題が影響して反映されることもあります。

このSBSの動きを感じることが、頭蓋を感じる上で一番最初のステップのように思います。頭蓋冠ホールドでコンタクトすると、正常であれば屈曲時は示指と小指が離れて足の方向に引っ張られる感触、伸展時はそれとは逆に示指と小指が近づき頭の方向に戻ってくる感触です。

ここではSBSの歪みパターンを感じて、頭蓋の動きをより感じられることを目指しましょう。
(なお、頭蓋の歪みパターンの図に関しては「オステオパシー総覧(下巻)」エンタプライズ より引用しました)

捻転

蝶形骨と後頭骨を前後に貫いた軸において、それぞれ反対方向に回旋する歪みパターンです。蝶形骨大翼の高い方を指して「○捻転」と呼びます。つまり蝶形骨の右側が高くなっている捻転なら右捻転と呼びます。捻転は臨床で最もよく見られる頭蓋の歪みパターンです。図は右捻転時の蝶形骨と後頭骨の動きで、写真は頭蓋冠ホールド時の指の動きです。写真の指はわかりやすいように大げさに動かしています。右手の指が上を向き、左手の指が下を向くような感触があります。

側屈回旋

前後軸と垂直軸の2種類の軸により起こる歪みパターンです。垂直軸は一つは蝶形骨体、もう一つは大後頭孔を通ります。SBSの片側が開き、蝶形骨、後頭骨ともに開いた方向に傾きます。SBSが開いた方向を指して「○側屈回旋」と呼びます。左側が開いている側屈回旋であれば左側屈回旋と呼びます。図は左側屈回旋時の蝶形骨と後頭骨の動きで、写真は頭蓋冠ホールド時の指の動きです。右手の指が狭まりながら頭方に動き、左手の指が広がりながら足方向に動くような感触があります。

垂直歪み

蝶形骨と後頭骨が左右方向の軸において、同方向に回旋することで起きます。SBSが上下に剪断されるような歪みパターンで垂直ストレインとも呼ばれます(ストレインとは「歪み」の意味です)。蝶形骨が上方向に剪断されるものを上方垂直歪み(あるいは上方垂直ストレイン)、下方向に剪断されるものを下方垂直歪み(あるいは下方垂直ストレイン)と呼びます。図は上方垂直歪み時の蝶形骨と後頭骨の動きで、写真は頭蓋冠ホールド時の指の動きです。写真だとわかりにくいかもしれませんが、左右ともに指がわずかに広がりながら下を向くような感触があります。

外側歪み

蝶形骨と後頭骨が垂直軸において同方向に回旋することで起こります。側方に剪断されるような歪みパターンで側方ストレインとも呼ばれます。蝶形骨が変位した方向をさして「○外側歪み」と呼びます。蝶形骨が右側に変位した外側歪みであれば右外側歪み(右側方ストレイン)と呼びます。図は右外側歪み時の蝶形骨と後頭骨の動きで、写真は頭蓋冠ホールド時の指の動きです。これも写真だとわかりにくいかもしれませんが、左右とも右側に倒れるような動きをします。頭側から見て両方の手が平行四辺形のような形になります(矢印での動きの表現が難しいため、この写真のみ矢印を入れていません)。

まとめ

頭蓋治療について歴史、背景から、頭蓋の生理的な動き、初期に学ぶ縫合の触診、動きの感じ方などをまとめました。しかし、多くのことが抜けていることは、ある程度習得した人が読むと一目瞭然だと思います。

基礎呼吸メカニズムについても、いくつか層の違いと言いますか、種類の違う複数の存在がありまして、10〜14サイクルと説明しましたが、感じられるものはそれだけではありません。同じものを指していても研究者によって数値の違いがあります。その5つの構成要素についても、本来は一つずつ説明するところですし、動きは頭蓋だけでなく、仙骨や全身で感じられなくてはいけません。

何より治療にも全く触れていません。

しかし、最初にもお話しした通り、頭蓋治療は書籍や自己学習で習得できるものではありません。詳細や触れていない点については、セミナーなどを受講して学びを深めていただけたらと思います。

ここでは講習を受講したものの、学習についていけない人や、理解のきっかけが見えない人のために、ステップの足がかりをつかんでもらうために書かせていただきました。

何回も同じことを書いていますが、頭蓋治療はそんなに簡単に習得できるものではありません。それにひとつステップを上がったとしても、さらに深く広大で難しい世界が待っています。

しかし、特別な才能が必要なわけではなく、繰り返し学習することで少しずつ向上していくものです。頭蓋領域のような、一見神秘的で不思議な世界が少しでもわかるようになったら、それは嬉しいことではないですか?

もし、この記事がそのような役に立てたなら、とても嬉しく思います。